カメラの世界に大変革期到来 「一眼レフ」の終焉と「ミラーレス」の台頭
プロカメラマンの端くれである筆者自身、これらの優位性に魅力を感じ、ソニーのミラーレスを初期から使ってきた。そして、プロの使用に十分耐える現行フルサイズミラーレス『α9』『α7RIII』の登場を機に、デジタル一眼レフを捨てて完全にミラーレスに移行した。同様の仲間はこの数年の間にどんどん増えていて、交流・情報交換用のSNSのグループもある。ちょうど、ソニーミラーレス機ユーザーのオフ会に参加する機会があったので、40〜50代の4人のプロと3人のアマチュアカメラマンに、ミラーレスを導入した経緯や使い心地を聞いてみた。
「乱暴な言い方になってしまいますが、ここまで長く一眼レフの時代が続いたのはメーカーの怠慢だと思いますよ」と語るのは、愛知県を拠点にマルチに活躍する岡本浩孝カメラマンだ。写真を仕事にし始めた頃はデジタル一眼レフを使用していたが、シャッターを切る直前にファインダーに映った像と、撮影後にモニターに映る撮影画像が異なることに納得がいかなかった。「フィルムの頃は、撮ってから写真ができあがるまでに時間差があったから、気にならなかったんです。でも、瞬時に撮影結果が見られるデジタルカメラでは、(ミラーレス一眼と同様の見え方の)3分の1の値段のコンパクトカメラの方がむしろ優秀に思えたんです」。だから、ソニーからレンズ交換式APS-Cミラーレス『NEX-5』が2010年に発売されると、「理想のカメラだ!」と飛びついた。
小型軽量ボディに先進的機能が同居
一眼レフは、自動巻き上げ機構やオートフォーカス機構、デジタル化・高画素化という技術の進歩と共にどんどん大型化していった。『ニコンF』が147x98x54mm・686gに対し、最新の後継機『D5』は160x158.5x92mm・1405gと、質量が2倍以上になっている。これに対し、先に発表されたフルサイズミラーレス『Z7』は、134x100.5x67.5mm・675gと、ほぼ『F』の大きさに先祖返りしている。
「私にとっては、小型軽量であることは必須条件です」と言うのは、右腕が不自由なため左腕一本でネイチャーフォトを撮る井上嘉代子カメラマンだ。ミラーレスの特徴を生かして使用機材の『α9』などに搭載された「ボディ内5軸手ブレ補正」も、片腕撮影をアシストしている。また、愛犬を撮るのに適したカメラを探した愛知県のアマチュアカメラマン、後藤守さんと加藤みきさんも、全力疾走する犬を追える高性能AFを搭載しながら小型軽量でもあるミラーレスに行き着いた。
一方、小学生の頃からカメラを手にしていたベテランアマチュアカメラマンのハンドルネーム「Ash御殿山」さんは、フィルムのレンジファインダー式カメラの名機「ライカM3」を残してはいるが、かつて使っていたフィルム一眼レフはもう持っていない。「フィルム代・現像代が高くなったので、もうライカはほぼ持ち出していません。ファインダーを覗いた時のEVFの明るさとライカなどに通じる軽さから、デジタルは最初からミラーレスです」
ソニーのミラーレスの売りである「瞳AF」を導入の最大の理由に挙げるのは、静岡県浜松市で写真スタジオを経営する千田照人カメラマンだ。「私たちの仕事はほぼ100%ポートレートです。ポートレートの基本は目にピントを合わせることですが、αならば『瞳AF』で目にピントを合わせておいて、EVFで確認しながら『ここらへんまでピントが来るのか。背景までちょっと合わせてみようか』などと緻密に絵作りができる。それは我々にとって革命的なことなんです」と語る。2人のお嬢さんもフォトグラファーになり共に仕事をしているが、最近この世界に入った長女は最初からミラーレスユーザーで一眼レフを知らないという。「フィルムとその流れを汲んだ一眼レフの時代は、いわゆる職人的な"技術"が大切でした。それを必要としなくなったのがミラーレス。もちろん、マニュアルでピントを合わせるといった基礎は教えますが、技術的な部分にエネルギーを割かなくてよい分、構図や色などに集中できる。感性を最大限発揮して撮れることを私は肯定的に捉えています」