最新記事

カメラ

カメラの世界に大変革期到来 「一眼レフ」の終焉と「ミラーレス」の台頭 

2018年9月3日(月)15時00分
内村コースケ(フォトジャーナリスト)

海外では既にポストミラーレスの動きも

筆者の学生時代の写真部の仲間には、EVFの画像には現実感がないと、一眼レフの光学ファインダーにこだわる者もいる。いわゆる「カメラ」らしさ=一眼レフの感触と考える古い世代は少なくない。一方で、初めて手にした本格的なカメラがミラーレスだという先の後藤守さんには、今や懐古主義と言われてしまいそうなそのようなこだわりはない。「シャッターを切る、というよりは、家電的な『スイッチを押す』という方が、動き回る犬を撮れるんじゃないかな、と思いました。『押せば写るんだろう』という感覚でカメラを始めましたが、ミラーレスは実際、それに近いかもしれませんね」

ミラーレスで動画もスチル写真も撮る平川郁二カメラマンは、もともとビデオ映像畑の出身。動画機能を搭載したデジタル一眼レフが登場していわゆる「一眼動画」が主流になると、「ビデオ」と「カメラ」の違いに戸惑うムービーカメラマンが多かったと言う。その中で平川カメラマンは、もともとムービーに強かったソニーがいち早く投入したミラーレスに着目し、試用を重ねた末、周りに先駆けて動画撮影機材とスチル撮影機材をミラーレスに一本化した。

特に海外では既に、動画と静止画の境目がなくなりつつある。米レッド・デジタル・シネマ・カンパニー製の8Kシネカメラなどを使い、10秒程度の8K動画から高画質の静止画を切り出すという新しい撮影スタイルが、欧米のトップフォトグラファーやクリエイターの間で定着しつつあるのだ。「海外は良くも悪くも結果主義なので、新しいものを受け入れるのも早い。自分が作りたいものができるのであれば楽な方がいいよね、という考え方ですね」と、海外アーティストと交流がある岡本カメラマンは言う。ミラーレスの販売の伸びも、北米・欧州が日本を上回る傾向にある。

「デジタルカメラのテクノロジーが最終的に行き着く先では、結局、人間の感性というアナログの勝負になると思う。感性・感覚的なところ以外は、機械がやってくれる。僕はそれが(写真表現の)真っ当な姿だと思いますよ」(岡本カメラマン)。古いものを大切にしたい、継続性にこだわりたいという気持ちを抱くのもまた、自然なことではある。しかし、「技術」から「感性」に重点を移すカメラマンが増えるほど、市場のシェアが一眼レフからミラーレス、そしてその次へと移行していくスピードは早まるかもしれない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

英企業信頼感、1月は1年ぶり低水準 事業見通しは改

ビジネス

基調物価の2%上昇に向け、緩和的な金融環境を維持=

ワールド

米運輸長官、連邦航空局の改革表明 旅客機・ヘリ衝突

ビジネス

コマツの4ー12月期、営業益2.8%増 建機販売減
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 8
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 9
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 10
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中