中国富裕層が群がるアメリカの高級物件
冷え込む国内市場を見限って海外の不動産に「お引っ越し」
高級志向 5つ星ホテルの階上にある超高級コンドミニアム「ワン57」も人気物件だ(ニューヨーク) Mike Sega-Reuters
中国政府は最近、不動産部門のテコ入れを図っているが、不動産市場は相変わらず苦戦している。中国の民間会社2社の調査によれば、国内主要288都市の8月の新築住宅価格は前月比で0・3%下げ、5カ月連続の下落となった。前年同月比では3%上昇したが、伸びは鈍化している。
住宅価格が下がり続ければ、中国経済全体に重大な脅威となるだろうと専門家は懸念を示す。しかも国外で不動産を購入する中国人が増えている中、中国の不動産市場が崩壊すれば大量の資金が国外流出し、バンクーバーやニューヨークやシドニーのように遠く離れた市場でも住宅価格が上昇する恐れがある。
中国は不動産部門に依存しており、GDPの伸びの16〜20%が不動産投資によるものだ。近年、輸出競争力が低下するなか、固定資産への投資によって高い経済成長率を維持してきた。
どんな仕組みか説明しよう。国有銀行が地方政府への融資を拡大、地方政府はその資金を不動産開発業者に貸し、都市部に近代的な高層マンションが建設される。市民は国内の不安定な株式市場に投資する代わりに貯金をはたいて不動産を買い、富裕層は投機目的で複数のマンションを買いあさる......。
この繰り返しが中国の開発業者を儲けさせ、建設ラッシュを招き、好況を維持してきた。その一方で住宅ブームはバブルの懸念をあおってもいる。不動産ブームの過熱を抑制しようと、中国の主要都市では過去1年間、住宅購入が制限され、2軒目の頭金の最低比率が引き上げられている。
海外の高級物件が人気
しかし不動産市場が冷え込んだら、これからも住宅を買いたい中国人はどこに投資すればいいのか。
投資先として魅力を増しているのは外国だ。中国政府は市民が国外に持ち出せる金額を1人5万ドルまでに厳しく制限しているが、他人と協力して規制をかいくぐることはできる。「銀行口座を交換するなどの方法で最大100万ドルを国外に持ち出せることも多い」と、中国経済に詳しいエコノミストのパトリック・チョバネクは言う。
現に過去1年間、アメリカで住宅を購入する中国人が急増している。中国人による不動産購入は今年3月までに50%増加し、時価総額は現在220億ドルに達している。中国人富裕層を引き寄せようと、米政府はEB−5プログラム(アメリカ国内の地域開発事業に50万ドル以上投資した外国人に永住権を与える)の一環として、中国人6895人に移民ビザを発給。発給件数2位は韓国人だが、こちらは364人にとどまっている。