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コラム
風刺画で読み解く「超大国」の現実 Superpower Satire
富裕層の海外留学は中国大学受験のずるい抜け道
(c)2018 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN
<毎年6月に実施される高考(全国統一大学入試)に向けて中国の受験生は「受験工場」での猛勉強に追われるが、富裕層の子弟は中学から海外に留学して名門大学にも楽々入学できる>
白(パイ)おばあさんは79歳、孫と2人暮らし。孫が1歳の時に両親は離婚した。かわいそうな子だ、大学に行かせて出世させようと思って、白おばあさんは借金をして実家を離れ、孫を安徽省の毛坦廠中学に入学させた。
受験生活を支えるために付き添って下宿でご飯を作り、日常の世話をする親たちを中国語で「陪読家長(付き添いの保護者)」と呼ぶ。毛坦廠中学の受験生は2万人以上、「陪読家長」も1万人を超える。白おばあさんはその中の1人なのだ。
これは中国のドキュメンタリー映画にあった実話だ。毛坦廠中学は山奥にあるが、大学合格率は常に90%超。生徒は毎朝5時半起床、6時20分には教室で自習開始。トイレの時間も厳しく制限され、昼食と夕食の各40分間以外はひたすら勉強、勉強、勉強。一日が終わり、下宿に戻るのは夜11時。翌朝はまた5時半に起床して軍隊のような一日を繰り返す。中国メディアから「アジア最大の受験工場」と呼ばれるほどだ。
毛坦廠中学の生徒はほとんどが普通の労働者家庭の子供で、親はよい教育を受けたことがなく、せめて子供を大学へ行かせて、将来は自分より楽な生活ができるようにと望んでいる。毛坦廠中学に匹敵するもう1つの受験工場が河北省の衡水中学だが、ここの生徒は中流家庭の子供が多く、目指しているのは超難関の「清華・北大」(清華大学と北京大学)。この学校の「清華・北大」合格者数は毎年少なくとも100人を超える。
中国の高考(全国統一大学入試)は毎年6月上旬に行われる。今年の受験者数は975万人。受験工場は各地にたくさんあるが、毛坦廠中学や衡水中学のような有名な学校も負け組のほうに属している。というのは、高考によって人生を変えようというのはそもそも負け組の考えなのだ。
勝ち組である高所得層の子供たちは中学から直接海外へ留学し、ハーバード大学やケンブリッジ大学などを目指す。たとえ海外の一流大学に合格できなくても国籍を変えるか、海外に2年間滞在すれば、外国人留学生として楽々「清華・北大」に入学できる。
つまり、貧富の格差によってスタートラインは既に違っている。中国の膨大な数の普通の受験生は、どんなに頑張ってもごく一部の「勝ち組」に勝つことはできないのだ。
【ポイント】
中学
毛坦廠中学は日本の高校に当たる高級中学。小学校の6年と日本の中学に当たる初級中学の3年が中国の義務教育
清華・北大
名門中の名門である清華大学と北京大学は多くの指導者を輩出してきた。現在の習近平国家主席は清華大卒、李克強首相は北京大卒
<本誌2018年6月26日号掲載>
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