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コラム
風刺画で読み解く「超大国」の現実 Superpower Satire
米中貿易戦争の本質は価値観のぶつかり合い
(c)2018 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN
<アメリカは国交を通じて中国に価値観も輸出して普及させようともくろんだが、それは失敗だったようだ>
「この世の中には2つの論理がある。1つは論理、もう1つは中国式論理」。中国人の若手人気作家、韓寒(ハン・ハン)は以前、自国政府にこう皮肉を言った。近頃の米中貿易戦争のにぎやかさを見て、この言葉を思い出した。人間はみんなそれぞれの価値観によって論理の出発点を選ぶ。表面的には米中間の貿易戦争に見えるが、その本質は価値観の戦いじゃないか?
今回の貿易戦争の起因は、不公正な貿易慣行に対し大統領判断で関税引き上げなどの制裁措置が取れると定めた米通商法301条に基づく調査結果だ。それによると2010年以来、中国側は米企業の中国進出時に技術譲渡を義務付けないことを公式の場合だけで少なくとも8回以上承諾したのに、相変わらず技術譲渡を続けさせている。また2001年のWTO加盟後、中国の官僚たちは書面的な要求を避け、できるだけ口頭や非公式な行政指導によって外国企業に技術移転を強いている。
表面的に承諾はするが、実際の行動は違う。「手段が正しいかどうかは別にして、結果的に正しい目的さえ達成できればよい」という中国式論理だ。西側世界の契約精神とは全く無関係。何千年もの歴史の中から生まれてきたこの生きる知恵は、中国人の間でかなり根深い。アメリカのような歴史の浅い国はおそらく理解できないだろう。アメリカは70年代に中国と国交を結んで以来、貿易で中国の経済振興を応援するとともに、アメリカ的な価値観も中国に輸出して普及しようともくろんできた。だが、結果から見てそれは失敗だったようだ。
中国が発表した「中国製造2025」という世界一の製造業大国になる戦略も、アメリカに危機感をもたらしている。301条の調査結果によると、ハイテク製造業における各国の生産量はアメリカが29%、次は中国で27%を占めている。技術革新はアメリカの国際競争力の源泉だ。世界経済の中心的地位を目指す中国の戦略に対して、アメリカ側はかなり不快だろう。経済力はある意味で発言力。発言力を握ると、世界の価値観も左右できる。
たとえ貿易戦争は一時的に停止したとしても、価値観をめぐる米中の持久戦はなかなかやみそうにない。
【ポイント】
韓寒
82年、上海生まれ。デビュー作『三重門(上海ビート)』がミリオンセラーに。プロのカーレーサーとしても活動する
中国製造2025(メイド・イン・チャイナ2025)
15年に中国政府が発表した向こう10年間の産業高度化戦略。建国100年の49年に世界一の製造強国になることが最終目標
<本誌2018年5月15日号掲載>
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