コラム

米環境保護庁(EPA)長官は、ただいま税金燃焼中(パックン)

2018年04月25日(水)18時40分
ロブ・ロジャース(風刺漫画家)/パックン(コラムニスト、タレント)

(c)2018 ROGERS─PITTSBURGH POST─GAZETTE

<トランプ政権のトンデモ人事の中でも最たるものがEPA長官のプルイット――環境を保護しない政策を次々に実行するばかりか自分と仲間のために公金をじゃんじゃん浪費中>

ドナルド・トランプ大統領の閣僚指名には「逆キャスティング」が目立った。ブラック企業の社長を労働長官に! 反公立教育運動家を教育長官に! そして今回のキーパーソン。地球温暖化を疑問視する、環境保護庁(EPA)反対派のスコット・プルイットをEPA長官に! 放火魔を消防署長にするような人事だ。

プルイットがEPA長官になると案の定、有害な化学物質の販売を許可したり、発電所や自動車の排気規制を緩和したりと、環境を保護しない方向に舵を切った。でも、国民が本気で怒りだしたのは今回の風刺画が指摘する公金の浪費だ。

例えば、昨年12月のモロッコ出張。専門家1人、古い仲間6人を連れて、公務と関係なく経由地のパリで2日を過ごした。

旅費は4日でなんと4万ドル。でもその分、モロッコでは懸命にアメリカの液化天然ガス(LNG)を売り込んだ。

EPA 長官が化石燃料の営業をやっている?! そう! でも理由がある。LNG会社のロビイストが、プルイットにマンションを格安で貸しているのだ。プルイットは律義!

彼はとにかく仲間を大事にする。地元から連れてきた仲間をEPA の重要ポストに抜擢。その1人は給料をもらいながら3カ月間ほとんど出勤していなかったと、内部告発された。もちろん、豪華パリ・モロッコ出張には同行しているけど。

ほかの2人は、それぞれ約3万ドルと約6万ドル昇給している。それも緊急時に水の専門家を雇うための特別予算を使って。当然、お友達は水の専門家ではない。水増しが得意なだけ。

プルイットは友達に優しいが、自分にも優しい。特に空を飛ぶときは。公務でファーストクラスに乗る。チャーター便を使う。軍用機を貸し切る。自費だとエコノミーを選ぶらしいけど......。それに、高くても特定の航空会社を利用する。みんなの税金をたくさん使い、個人のマイルをためるということだ。

環境問題を無視し、burn money(お金を燃やす)、つまり浪費するプルイット。なんでファーストクラスに乗るのかと聞かれたら、環境問題をめぐって自分は政治的に toxic environment(危険な環境)にいるからと答えた。自分の環境は気にするんだね。

【ポイント】
MR.PRUITT...WE'RE SUPPOSED TO ENFORCE THE REGULATIONS...NOT BURN THEM!

ミスター・プルイット、われわれは環境規制を強化しなければならないのですが......燃やすのではなく!

RELAX...THOSE AREN'T REGULATIONS...THEY'RE TAXPAYER DOLLARS!

まあ焦るな、これは規制ではなく......納税者のカネだ!

<本誌2018年5月1&8日号掲載>

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story