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コラム
風刺画で読み解く「超大国」の現実 Superpower Satire
中国で進む習近平の官製トイレ大革命
©2018 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN
<悪名高い中国のトイレを改善する「トイレ革命」を習近平が推進したところ、党官僚の忠誠心を示すチャンスに使われ豪華トイレが全土で増加中>
習近平(シー・チンピン)政権は「トイレ革命」を推進している。トイレ問題は小さなことではない。文明発展の重要課題だから、観光地や都会だけでなく、農村の人々も衛生的なトイレを使えるようにしろ、と習近平は最高レベルの指示を出している。
なんでも丸見えと評判の中国の「ニーハオトイレ」は、世界でかなり悪名高い。昔の中国は貧乏で、「民は食を以て天と為す」ことばかり考えていて、トイレ事情はほぼ無視されていた。ところが今は飽食でダイエットが品格という時代なので、「民は厠(かわや)を以て天と為す」といわれるほどきれいなトイレが必要とされている。強国の誇りを世界に示す意味も強い。
というわけで、中国は各地で熱心にトイレ革命を展開中。トイレ革命検討会やらトイレ革命勉強チームやらトイレ長責任制やら、いろいろな記事が各地の新聞で取り上げられている。この革命によって、全国で7万カ所もトイレが増えた。「五つ星トイレ」も少なくない。広くて豪華な内装はもちろんソファ付きの休憩室や無料WiFi、マッサージ椅子、飲み物が詰まった冷蔵庫、電子レンジ、それに顔認証システムも。建築費は高価なもので100万元(約1700万円)以上。管理費も安くない。
人民日報によると、ある観光名所には30メートル以内に2つのトイレがある。古いニーハオトイレはよく利用されているが、もう1つの新しい豪華トイレは封鎖中。海抜が高い場所で、真夏でも夜になると氷が張る。つまり使用機能はニーハオトイレと変わらず、大金を投じたのに何の役にも立たない。
どうしてこんな状態になったのか。そもそも「革命」という中国語は「天命を革(あらた)める」の意味で、政権や支配者に不満を持つ民衆蜂起のことであるが、赤い中国の革命は、いつも偉大な指導者の指示のもと下々が自己革命を競わされる。
まあ、これも赤い中国の特色だから仕方がない。だが、こういう上から下への革命は、人民の幸福より北京の指導者の機嫌のほうがずっと肝要だ。これが最高指導者に忠誠心を示すチャンスだと地方官僚はよく知っている。トイレは豪華なほど自分の功績も大きく見える。功績が大きいほど出世も早い。つまり「官は厠を以て功と為す」のトイレ革命なのだ。
【ポイント】
ニーハオトイレ
扉や場合によっては隣との壁すらなく、ほかの利用者に「ニーハオ」と挨拶しながら用を足せるトイレ
「 民は食を以て天と為す」
歴史書『史記』『漢書』の言葉。正式には「王以民為天、民以食為天(王は民を最も大切なものと考え、民は食を最も大切なものと考える)」
<本誌2018年3月27日号掲載>
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