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コラム
風刺画で読み解く「超大国」の現実 Superpower Satire
「中国崩壊論」の嘘とホント
©2017 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN
<中国経済には様々な問題が山積しているが、これまでの成長が一瞬で消えることはない>
最近、日本で「中国崩壊論の崩壊」という議論が盛んだ。05年の反日デモ以来、中国国民と日本国民の互いへの感情は悪化する一方。経済的にも軍事的にも巨大化する中国に不安を覚えた日本人に受けたのが、「中国崩壊論」だ。かつて東欧の社会主義国とソ連があっという間に消滅したように、都合の悪い国がある日突然消えてくれたら、という願望がその根底にはある。ただご存じのとおり中国は崩壊していない。
日本国籍を取得した元・中国人という客観的な立場から言うが、中国は崩壊しない。中国人もバカではない。もちろん経済にバブルな部分もあるが、ほとんどの中国人はマジメに働いている。こつこつ生産したものが一瞬で消えることはない。
もちろん中国経済には問題が山積している。非効率なのに特権を貪る国有企業、終わらない不動産バブル、無謀な開発を続ける地方政府とその巨額の借金......。バブル崩壊で日本が崩壊しなかったように、こういった問題がはじけても中国はすぐには崩壊しない。ただし、中国政府は別だ。
最近、中国のデモや当局に対する抗議活動は国外でほとんど報じられなくなった。しかし政府が動きを抑え込んでいるのではなく、当たり前の話としてメディアが取り上げなくなっただけ。数自体は減っていない。
拝金主義に侵されてきた国民の間で「良知」、つまり人間が本来持っているはずの良識も再認識されている。最近、知識人の間でひそかにささやかれているのが「猪性」という言葉。「猪(ブタ)」のように権力にひたすら従う人間になるな、と中国人が中国人を戒めているのだ。彼らは変わり始めている。
今、仮に中国で選挙が行われたら勝つのは共産党だろう。形だけ存在するほかの政党に統治能力はない。台湾では民主化後もしばらく独裁政党だった国民党が政権を維持した。ただし、それが永久に続かないことも台湾の歴史は証明している。
恐怖と妄想が入り交じった表情で口をあんぐりと開けて崩壊を待つより、冷静になって中国のいいところと悪いところに向き合ったほうがいい。それが日本の国益になる、と元・中国人、現・日本人として忠告しておく。
【ポイント】
国有企業
中国政府が全資産を保有する企業。政府の力を背景に、国有企業が民間企業を犠牲にする「国進民退」現象が問題視されている
台湾民主化
87年に戒厳令解除。96年に初の直接選挙による総統選が行われ、国民党の李登輝(リー・トンホイ)が当選した。00年の総統選で政権交代
<本誌2017年11月28日号掲載>
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