保育の拡充よりも優遇される「3世代同居」の不可解
「保育園落ちた」ブログをきっかけに待機児童問題が注目を集めている Yuriko Nakao-REUTERS
ブログ「保育園落ちた日本死ね!!!」をきっかけに待機児童問題が注目を集めているが、とにもかくにも保育士の給与増を目指すべきだろう。厚生労働省調査の全産業の平均給与は約30万円。保育士は、その平均よりも9万円低い21万円。これでは保育士が不足するのは当然である。昨年末、厚労省は、小学校の教員免許を持つ人を保育士としても活用できるようにする緊急対策をまとめているが、ピントがずれている。なれる資格を持つ人を増やしても、給与水準が改善しなければ保育士は増えない。保育士の資格を持ちながらも主に給与面を理由にその職を選べずにいる潜在保育士。この潜在保育士にどうすれば現場に戻ってもらえるかを考えるべきだ。
このブログについて、「これ、本当に女性が書いた文章なんですかね」と発言した平沢勝栄議員、「便所の落書き」と形容した杉並区・田中裕太郎区議など、頭を抱える存在がコンスタントに登場してくる。怒り心頭に発するが、本人達は自分の発言をさほど問題だとは思ってはいない様子だ。待機児童問題があらゆる問題の中で、どことなくエトセトラの存在に留まってしまうのは、こういう態度の方々が集結しているからなのか。とはいえ、選挙に響きそうとなれば重い腰を上げるわけで、このブログが果たした役割はとても大きい。
皆、あまり話題にしなくなったが、昨年9月に発表された「新・3本の矢」のひとつに、「夢をつむぐ子育て支援」がある。安倍首相は新たな矢を提言する会見で、現在1.4程度の合計特殊出生率を、1.8まで回復させるとし、「家族を持つことの素晴らしさが、『実感』として広がっていけば、子どもを望む人たちがもっと増えることで、人口が安定する『出生率2.08』も十分視野に入ってくる。少子化の流れに『終止符』を打つことができる、と考えています」(2015年9月24日)と熱弁した。しかし、働く女性の多くが「第二子の壁」を感じているなかで、1.8という出生率を実現させるためには、「家族を持つことの素晴らしさを実感する」云々の前に、保育環境の充実を目指すべきだろう。
だが、現政権はそれを一義に考えているとは思えない。第3次安倍内閣で国土交通大臣に任命された公明党・石井啓一氏は、その就任会見の質疑応答で、「大臣就任に当たって、安倍総理から直接どのような点に力入れてほしいという指示がありましたでしょうか」と問われ、「出生率を上げていくということに関して、3世代の近居・同居を促進する住宅政策を検討し、実施するようにという御指示もございました」(国土交通省HP)と答えている。
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