インタビュー:トランプ関税で荷動きに懸念、荷主は「北米向け貨物に慎重」=日本郵船社長

日本郵船の曽我貴也社長(写真)はロイターとのインタビューで、トランプ米大統領の関税政策が米国内の物価上昇と消費低迷を招き、荷動きが鈍化する可能性に懸念示した。 3月31日、東京の日本郵船本社で撮影(2025年 ロイター/Tim Kelly)
Yuka Obayashi
[東京 2日 ロイター] - 日本郵船の曽我貴也社長はロイターとのインタビューで、トランプ米大統領の関税政策が米国内の物価上昇と消費低迷を招き、荷動きが鈍化する可能性に懸念を示した。トランプ氏が提案している中国製船舶の米国への入港規制については、中国に関連する船が多い中で「現実的なのか」と懐疑的に見ていることを明らかにした。
トランプ大統領が米国時間2日に発表する「相互関税」は現時点で内容が分からず、3日に発動予定の自動車関税も影響が読み切れず、世界経済の不透明要因となっている。曽我社長は「どの荷主も北米向けの貨物については今ものすごく慎重に見ている。どういう形で輸出を続けるか、あるいは続けられるか、そういったことを考えている」と語った。
米国へ輸出する自動車には25%の追加関税が課される予定で、日本の乗用車の場合は現在の2.5%から27.5%に引き上げられる。自動車産業が集積する米ミシガン州の経済団体は31日、輸入車と部品への追加関税は大幅な値上げと供給網の混乱を引き起こし、州経済に打撃だとし、トランプ大統領に計画中止を求めた。
曽我社長は「最終的には米国民が(関税のコストを)払うことになる。自動車だけではなく、いろいろな生活物資の値段がどんどん上がり、購買意欲が下がっていく」と語った。「実際の物の流れを少なくしてしまう。そこが一番の懸念だ」とした。
日本郵船を含む日本の海運3社が共同出資するコンテナ船事業会社オーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)は、輸送能力の3割をアジアと北米を結ぶ航路が占める。日本郵船は自動車輸送事業の北米向け売上高を公表していないが、経済産業省がまとめたデータによると、日本は2023年に米国へ149万台を輸出しており、これは日系メーカーの米国販売の約26%に相当する。
一方、曽我社長は関税の導入によって物の流れが変わり、新たな事業機会が生まれる可能性にも言及した。「例えば中国は原料や素材を米国ではなく他の国から輸入しよう考えるかもしれない。今度はそっちにオポチュニティー(機会)がおそらく出てくる」と述べた。新型コロナウイルス流行時のように物流が混乱して船が不足し、運賃が上昇する可能性もあるとした。
曽我社長によると、関税の導入を見越して荷主が米国内に在庫を積み上げる「駆け込み輸出」の動きは、昨年末から今年1月末の中国の大型連休の直前まで多少みられたという。特に一般消費財などコンテナ貨物が増えたとしている。
海運業界は、トランプ大統領が目指す国内造船産業の復活も逆風となる可能性がある。造船は中国勢が世界的に大きなシェアを持ち、トランプ氏は中国製の船舶や中国海運の輸送船に追加の入港料を課すことを検討している。
規制の詳細は分かっていないが、世界で運航する船の多くは中国が関係しており、曽我社長は「本当に現実的な話なのか、少し懐疑的」と語った。「船の数が減ると米国へ出入りする荷物も必ず減るはず。米国民の生活に影響するし、米国経済のためにも決していいとは思えない」とした上で、「人びとの生活を支える、そのための価値を届けることができなくなることを非常に懸念している」と話した。
日本郵船が所有または運航する船舶約800隻のうち、中国で建造されたものは10%未満だという。
*3月31日にインタビューしました。
(編集:久保信博)
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