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離婚と、リストラの不安──ベテラン写真家が自身を投影した作品
From Aristide Economopoulos @aeconomopoulos
<受賞歴もあるアリスティード・エコノモプロスが、自身のサイト以外では発表したことのなかったパーソナルな作品。微妙な距離感が作品に漂っている>
今回紹介する写真家は、ニューヨークの近郊、ニュージャージ州のジャージーシティに住むアリスティード・エコノモプロスだ。同州のスター・レジャー紙のベテラン・スタッフフォトグラファー、47歳である。
すでに20代、30代前半から名を馳せていた。アメリカのロデオを白黒写真で切り取ったストーリーはワールド・プレス・フォト(世界報道写真コンテスト)のスポーツ部門に入賞し、また、2001年の9.11の フォトエッセイも大きなインパクトをアメリカ国内外の写真界に与えた。
だが、そうした栄光よりも、エコノモプロスが現在撮っているパーソナルな作品のほうがより重みがあるかもしれない。なぜなら、そうした作品は、彼自身のメタファーであり、またセラピーになっているからだ。
4~5年ほど前から本格的に撮り出し、自身のサイト以外では実質上発表したことがないという、ニューヨークの有名なビーチをモチーフとしたコニーアイランド・シリーズ、および2001年の11月から撮るようになったというキューバ・シリーズはその典型だろう。
彼のパーソナルな作品の多くは、華やかな色彩、黄色や赤のトーンでしばしば構成されている。だがハイコントラストな、あるいは色の押し付けがましさを感じさせるようなキツイ調子ではない。多くの写真が夕暮れ時の非常に柔らかい光を選んで撮影されているためだ。あるいは、絶妙な日中のシンクロのフラッシュ撮影で。そのため見る者は、しばしば写真のイメージの中に紛れ込んでしまうかのような錯覚さえ覚える。
そうした溶け込むような感覚は、エコノモプロスが親密性とエモーション、とりわけソフト・エモーションを大切な要素としているからでもある。構図はあまり気にかけないという。人間性とそれが織りなす瞬間、瞬間を感じ取りたいと。
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