コラム

通信社的な職人芸から生まれた、ミニマリズムのインスタグラム

2018年08月24日(金)16時00分

From Gabriel Bouys @gabrielbouys

<通信社タイプの写真家の作品は、単純化され没個性的になりがちだが......なぜAFPのガブリエル・ブワはこのような写真を撮れるのか>

今回取り上げる写真家は、AFP(フランスの通信社Agence France-Presse)のガブリエル・ブワ。南フランスにあるベジエ生まれの56歳で、現在はスペインのマドリードのAFP写真部のチーフである。

今までは、一般にワイアーと呼ばれる通信社タイプ(AFPの他にAP、ロイター、Gettyなど)の写真家は紹介してこなかった。彼らは基本的に、最大公約数のオーディエンスを満足させ、日々のニュースを迅速に追う写真家だ。

その作品は、偉大なる職人芸とも言えるが、分かりやすく単純化されていて、その中で情報を最大のポイントにしなければならないせいか、往々にして予定調和で終わっており、没個性的にもなりがちだったからだ。

とはいえ、「決定的瞬間」というもう1つの大きな写真要素を、彼らほど肝に命じている写真家もいないだろう。単純化も含め――この要素は諸刃の剣的な特性を持っている――そうした職業的属性は、時として非常に優れた写真家を生み出す。ブアもその1人だ。

通信社タイプの写真家であるだけに、ブアはスポーツやイベントものを得意とする。2000年にはローマ法王のポートレートでワールド・プレス・フォト(世界報道写真コンテスト)の3位に入賞した。望遠レンズを好み、撮影では、ミニマリズムとディテールという2つのポイントを大切にしているという。ディテールが気に食わないときは、その写真自体を消去してしまうこともあるそうだ。

ミニマリズムとディテールは、実のところ、ブアの写真の最大の魅力だ。彼は、ファインダーの中に飛び込んでくる決定的瞬間に反応して単にシャッターを切っているだけではない。その瞬間にその被写体、あるいは他の要素にまとわりついているディテールを見極めながら、シャッターを切っているのである。

gabrielbouysさん(@gabrielbouys)がシェアした投稿 -

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

シリア衝突、死者1000人超え 「責任追及」と暫定

ビジネス

今年の第4四半期米GDP予測、1.5%へ引き下げ=

ワールド

米商務長官、インドに関税引き下げ要求

ワールド

ルビオ米国務長官、10─12日にサウジ訪問 ウクラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    ラオスで熱気球が「着陸に失敗」して木に衝突...絶望的な瞬間、乗客が撮影していた映像が話題
  • 3
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手」を知ってネット爆笑
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 6
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 7
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 8
    中国経済に大きな打撃...1-2月の輸出が大幅に減速 …
  • 9
    鳥類の肺に高濃度のマイクロプラスチック検出...ヒト…
  • 10
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 4
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 5
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 6
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 7
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 10
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story