- HOME
- コラム
- Instagramフォトグラファーズ
- どこか不可思議な、動物と少女のポートレート
どこか不可思議な、動物と少女のポートレート
実のところ、シュワルツにとっての動物は、写真家としてのライフワークを超えている。これまで、彼女のキャリアのすべては動物たちと共にあった。MFA(美術学修士)を保持しているが、その時の卒論は「ペットと野良猫、野良犬たち」だった。出版した本はすべて動物をテーマにしたものだ。
だが、「動物写真家よりも、動物中心主義者であることが自身の最も大切な核だ」と彼女は言う。生まれた時からそういう気質だったそうだ。動物と人間に違いはない、むしろ人間のほうがエゴがあり残虐である、と考えている。
【参考記事】Picture Power 娯楽で殺されるライオンたち
とはいえ、そうした動物中心主義の気質だけでは、こういった作品は生まれなかっただろう。シュワルツが動物の写真を撮るようになったきっかけは、自身が子供時代、いわゆる鍵っ子だったこと。その寂しさを埋めるために猫を飼うことを許され、10歳からは、猫にドレスを着せて写真を撮るようになっていたという。
また、父親を19歳の時に亡くしている。さらには娘が3歳になった頃、シュワルツの母親と義理の母親が癌と診断され、半年後には共に亡くなってしまった。それが彼女に、いかに人生がはかないか、大切な人と時間を共にすることがどれほど大切かを教えてくれた。
それがきっかけとなり、シュワルツは大学の写真講師の仕事などでどれほど忙しくても、娘と可能な限り一緒に過ごし、動物たちとのフォトセッションを行うようになっていったのだ。
実際、写真という最終的な結果よりも、動物たちに会って関わりを持ち、娘と共に存在し、そうした経験をシェアすることのほうが何よりも大切だと彼女は語る。だからこそ、彼女の作品には、写真そのものさえ超えてしまうような何かがあるのかもしれない。
ちなみに、友人の飼っていた猿――この猿自身が友人でもある――の名にちなんで付けられたアメリアは、この秋からシュワルツの元を離れて大学に行くことになる。だが、彼女と動物とのプロジェクトはまだまだ続けていく、とのことだ。
今回ご紹介したInstagramフォトグラファー:
Robin Schwartz @robin_schwartz
【参考記事】世界報道写真入賞作「ささやくクジラたち」を撮った人類学者
【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
ご登録(無料)はこちらから=>>
この筆者のコラム
未婚女性やバーニングマン......決して一線は越えない「普通の人」たち 2020.03.13
iPhoneで撮影、北欧の「瞬間」を切り取る20歳のストリートフォトグラファー 2020.02.13
「男が持つ邪悪性をドキュメントしてきた」現代を代表する戦争写真家クリストファー・モーリス 2020.01.16
「アカウントは2回消した、それでも飽きない」本職はビル管理人のフォトグラファーは言う 2019.12.16
トランプ政権誕生でワシントンへ「全てはこのための準備に過ぎなかったとさえ思う」 2019.11.23
世界的な写真家が「魔法的な構図の創作者」を超えた写真 2019.10.27
日本の路地を彷徨い、人生が変わった「不思議と迷わなかった」 2019.09.27