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ハイチで生死に関わる経験をしたベテラン写真家の「架空」プロジェクト
スティーバーが30年以上関わってしまったというハイチは、彼女にとってある種、生涯の伴侶以上の存在になった。ハイチが名声と生死に関わる体験を彼女に与えたというだけではない。彼女がストリートから救出しようとしたウォルデックという少年は、スティーバーや他のジャーナリストに囲まれながら生活するようになったため、自らを特別視し始め、結局、義務教育もまともに終わらせることができずドラッグに溺れるようになってしまった。スティーバーはそれを自分のせいだと責め続けていたのである。
その上ハイチは、数年ごとに何か政治的、あるいは自然災害的な危機が起こる。そのたびにアメリカをはじめとする国際社会のメンバーから多大な復興援助が行われる。だが、良くなるどころか――ハイチのみならず国際社会の腐敗のためか――そのたびにハイチの生活状況や治安は悪化していっているのである。スティーバーはその悲しすぎる現実を誰よりも痛感してきた。
加えて、母1人娘1人の環境で育ってきたスティーバーの母親は、亡くなる前の8年ほどは認知症で苦しんでいた。2人の深い愛情の絆さえも忘却の中へと消えていかなければならなかった。こうした様々な経験と現在も情熱を維持し続けられるキャラクター的な才能が重なって、ハイチのブードゥー教の儀式のように不可思議な魅力と斬新性を持ったプロジェクトが生まれたのである。
ちなみに、最初の4枚は、その"The Secret Garden of Lily LaPalma"シリーズだが、最後の写真(下)は、スティーバーが自らのセラピーの一貫として認知症を患った母親を撮影したシリーズ"Rites of Passage"の1枚である。
今回ご紹介したInstagramフォトグラファー:
Maggie Steber @maggiesteber
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