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このシンプルさの中に、日系人のアイデンティティーが息づく
東京・浅草寺の市場界隈の閉じたシャッター From Kevin J. Miyazaki @kevinmiyazaki
写真には、しばしば意図していなくても、社会的現象や撮影者のアイデンティティーが付随してくる。才能ある写真家の場合はとりわけそうだ。日系アメリカ人4世のケヴィン・ミヤザキもその1人。生まれも育ちも米中西部のウィスコンシン州という彼は、エディトリアル・フォトグラファーであり、アーティストでもある。また、同州にあるミルウォーキー・インスティテュート・オブ・アート&デザインで教鞭もとっている。
作品スタイルは、インダストリアルでコンセプチュアルな、ミニマリズムと言っていい。仕事ではポートレイト、食べ物、旅行関係の写真を多く撮っていて、無駄を省いたシンプルさが光っており、乾いた感じも漂う。
一見したところでは、日本で学生運動の反動として70年代~80年代中頃に広告と雑誌がリードした"生活臭のない空気感"、言いかえれば、当時の日本人が勝手に思い描いていたアメリカのイメージに近いように思えるかもしれない。
だが、そうした表面的な匂いとは裏腹に、彼の写真の多くには、人間の歴史そのものが持つ生活感が息づいている。インスタグラムについては、ミヤザキ自身、作品というよりは、ランダムに観察・記録するパーソナルなものと言っているのだが、それにもかかわらず、彼自身のアイデンティティーと、世代を超えた過去の記憶が見え隠れしている。
たとえば、下で紹介する"Thinking about mountains"はそうした写真の1つだ。 撮影場所はシカゴ。日本の富士山とワシントン州にあるレーニア山とを思い描いて撮ったものである。ワシントン州は、彼の父方の祖母たちが日本から移り住んだ場所だ。その後、日系2世である父親は、ワシントン州を離れ、結婚した3世の母とともにウィスコンシン州に移って行った。
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