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ロシアの過酷な現実を生き抜いた記憶を写真に収めて
多くの友達は、彼が20歳になるまでに命を落としたか、あるいは刑務所に入れられたかのどちらかだった。そうした環境を彼が生き抜けたのは、まさに運だったのかもしれない。マルコフはこういう。「子供時代の記憶、とりわけ思春期前のそれは、常に心の中で大きな存在だ。それが私の写真に影響を与えている」と。
彼の作品は、自らの子供時代のメタファーになっている。「あるとき私は、自分自身の子供時代を写真に収めようとしているのだと悟った。......私の作品はロシアの暗部を映し出しているけれど、私自身がその暗部の一部であることも認識しなければならない」
孤児院で働きだした理由について、彼はいう。「子供たちを見ていると、昔の自分を思いだす。彼らが、私が犯した過ちを繰り返さないように、手助けできるんじゃないかと思った。だから働きだしたんだ」
マルコフは、現在も彼が住むプスコフの小さな田舎町を愛している。今年、「Getty Images Instagram Grant」の賞を獲得したため、マルコフとプスコフの町は世界的に有名になってしまったが、より大きな好機を求めて、モスクワなどの大きな街には移り住む気はないという。
プスコフで仕事を探すのはむろん大変だが、「クリエイティブな面でも精神的な面でもここは十分に満たしてくれる」とマルコフ。「それに、こんな小さな街でもグローバルな巨大企業などから大きな関心を引くことはできる。実際、ゲッティとインスタグラムがそれを証明してくれた」
今回ご紹介したInstagramフォトグラファー:
Dmitry Markov @dcim.ru
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