コラム

new-style(新型)coronavirus, stay reki(渡航歴)...厚労省の新型ウイルス情報の英語がひどかった

2020年02月23日(日)10時00分

機械翻訳は便利だが、人間の翻訳者ほどの質は得られない

この連載でこれまで紹介してきた、街で見かけた妙な英語の一定数は、機械翻訳によるものだと思われます。機械翻訳は使いやすいし、誰でも利用できます。しかし、それと同時に落とし穴も多いのです。

いくら質のよいアルゴリズムで動いていても、人間の翻訳者ほどの質は得られません。特に日本語の場合、主語がなかったり、婉曲的な表現が使われたり、「一を聞いて十を知る」のように読者の想像力に頼るような書き方をされたりする文が多く、それらを機械で翻訳するのはかなり厳しいように思われます。人間だったら明記されていない部分を推測できますが、コンピューターはそれを得意としていません。

ちなみに、このような機械翻訳機能が付いているのは厚労省のサイトだけではないそうです。ツイッターで毎日新聞記者の和田浩明さん(@spearsden)からはこのようなコメントがありました。


自治体で「機械翻訳」で多言語発信しているところ、英語を見る限り、めろめろで意味不明ですよ。よっぱらいの寝言よりひどい。そのうち、えらいことになる。ああいうものを納品する業者も業者だと思う。誰のためにもなっていない。

日本に住む外国人にとって、政府や自治体が提供する情報はとても大切です。なぜ政府の機関は機械翻訳、それも質の低い機械翻訳に頼っているのでしょうか? プロフェッショナルの翻訳者に頼むほどの予算がないでしょうか?

ツイッターで@Kumappusさんは以下のような仮説を述べていました。


これ、もしかすると毎度毎度お馴染みのゼロリスク病の裏返しかも。
・役所内のできる人が翻訳しようとするとミスしたときに吊るし上げられるから外注
・受け取ったものをチェックしておかしいと思ってもミスを指摘してそれが間違いだと吊るし上げられるから放置

もしそれが当たっているのであれば、非常に残念です。

今の時代、日本の組織は外国語で迅速かつ正確な情報発信をすることが期待されています。是非とも、もっと努力をしていただきたいと思います。

【参考記事】すでにTOEIC960点越え、日本の第一人者に「国産」機械翻訳について聞いた
【参考記事】英語学習は不要になる? どんな能力が必要に? 機械翻訳の第一人者に聞いた

●お知らせ
20200303issue_cover200.jpg

本誌2月26日発売号は「AI時代の英語学習」特集(3月4日号)です。
自動翻訳(機械翻訳)はどこまで使えるのか? AI翻訳・通訳を使いこなすのに必要な英語力、そしてAIの長所と短所を見極めた新時代の英語学習法とは?
特集にはロッシェル・カップ氏による「AIには難しい! ビジネスの交渉英語」文例集も収録しています。

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

プロフィール

ロッシェル・カップ

Rochelle Kopp 北九州市立大学英米学科グローバルビジネスプログラム教授。日本の多国籍企業の海外進出や海外企業の日本拠点をサポートするジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社の創立者兼社長。イェ−ル大学歴史学部卒業、シガゴ大学経営大学院修了(MBA)。『英語の品格』(共著)、『反省しないアメリカ人をあつかう方法34』『日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?』『日本企業がシリコンバレーのスピードを身につける方法』(共著)など著書多数。最新刊は『マンガでわかる外国人との働き方』(共著)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 6

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story