コラム

伊藤穰一氏が説く「ナウイズム」/Take matters into one's own hands(自らの手で対応する)

2016年10月18日(火)06時25分

【今週のTED Talk動画】 Want to innovate? Become a "now-ist"
http://www.ted.com/talks/joi_ito_want_to_innovate_become_a_now_ist

登壇者:伊藤穰一

 MIT (マサチューセッツ工科大学)のMedia Labはイノベーションの世界でよく知られており、このTEDトークでは、そのディレクターである伊藤穰一氏が物事の進め方に関する独自の考え方を紹介している。インターネット時代以前は、未来学が尊重されていて、将来を予測しようとする動きが活発であったが、伊藤氏はそのアプローチは今の時代に合っていないと主張する。

 代わりに彼が推薦するのは、許可が得られるのを待ったり、さまざまな計画を練ったり、自分が正しいかどうかについての証拠を待つよりは、自分が作りたいものを早く作り、それを絶えず改善していくやり方である。現在の興味深いプロジェクトは全てそういったやり方で進められているそうで、彼はこのトークでその具体例を多数紹介している。このTEDトークは自分の仕事の進め方を再考する良いきっかけになるだろう。

【参考記事】 MITメディアラボ所長 伊藤穰一が考える「AI時代の仕事の未来」
【参考記事】 MITメディアラボ所長 伊藤穰一が考える「社会参加型人工知能 」

キーフレーズ解説

Take matters into one's own hands
自らの手で対応する
(動画1:15より)

 Take matters into one's own handsというのは、本来あることをするべき立場の当局者や担当者がそれをやっていない時に、代わりに自分で何とかしようとすることを意味します。要するに、自分の手によって問題に対処するということです。

 例えば3.11の後、伊藤氏を含む一部の人々は福島の原発事故により放出された放射線について心配し、日本にいる家族の安否を確認したかったにもかかわらず、テレビで東京電力や政府当局の話を聞いても有益な情報を全く得られなかったそうです。そのため、彼らは対策として、インターネットを使ってtake matters into my own handsをしようとしていたそうです。

 ここでいくつか使用例を紹介します:

●When the police failed to catch her father's murderer, she decided to take matters into her own hands and look herself.
(警察が彼女の父を殺した犯人を捕まえられなかった時、彼女は自らの手で探すことを決意した)

●When crime escalated, the neighbors took matters into their own hands and hired a security patrol.
(犯罪が増加した時、地域の人々は自らの手で対応し、お金を出して巡回する警備員を雇った)

●His wife refused to discipline the children so he had to take matters into his own hands.
(妻が子供のしつけを断ったため、彼は自分でしなければならなくなった)

プロフィール

ロッシェル・カップ

Rochelle Kopp 異文化コミュニケ−ション、グローバル人材育成、そして人事管理を専門とする経営コンサルタント。日本の多国籍企業の海外進出や海外企業の日本拠点をサポートするジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社の創立者兼社長。イェ−ル大学歴史学部卒業、シガゴ大学経営大学院修了(MBA)。『シリコンバレーの英語――スタートアップ天国のしくみ』(IBC出版)、『日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?』(クロスメディア・パブリッシング)、『反省しないアメリカ人をあつかう方法34』(アルク)など著書多数。最新刊は『日本企業がシリコンバレーのスピードを身につける方法』(共著、クロスメディア・パブリッシング)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story