コラム

米大統領選、最終盤に揺れ動く有権者の心理の行方は?

2024年10月23日(水)11時00分

こういった点について現時点では色々なことが言えるわけです。また、このような点に影響された世論が、調査の数字としてトランプ氏有利の傾向をアウトプットとして出してくるというのも、理解できます。問題は本当にこれが投票行動に直結するのかということです。

雇用や物価に不満を抱き、マスク氏の参加に関心を抱くような高学歴の若者層が出てきたのは理解できます。ですが、彼らが本当に「暴力肯定、女性蔑視、ロシア癒着」といった懸念を丸呑みして、トランプに1票を投じることができるのか、これはまだ分かりません。


同じように、ガザでの人道危機、レバノンでの強硬策などを支持するハリス氏に「嫌気」がするからといって、若者や中東系のリベラル票が「露骨に中東系を差別する」トランプ氏に入れるかというと、これも難しい話だと思います。

男性票については、アメリカの現在の基準では一種「女性らしく理想的な外見」を持ったハリス氏が、眩しいほどの「大笑い」をするのは馴染めない、そうした人が一定数いるのは分かります。あの「大笑い」を思い浮かべると、ハリス氏のことを語るのは恥ずかしいという感覚を持つ人もいるでしょう。ですが、だからといって「ならばトランプに入れよう」ということには、そうは簡単にはならないと思うのです。

いずれにしても、決戦州それぞれの勝敗は歴史的な僅差になり、全体も僅差となる中で、当確までの時間も相当にかかるという見通しを持つことが必要なようです。ただ、現時点で出ているトランプ有利の数字は、今回は特に、そのまま受け止めるのは難しいように思います。これから投票日まで、様々なファクターで有権者心理が動いていくと思いますが、今回整理したような要素も頭に入れながら見ていきたいと思います。

【関連記事】
トランプ前大統領、移民「ペット食べる」と再び主張...反論に耳貸さず
真の狙いは「世界支配」...トランプを「神に選ばれし者」と信じるキリスト教右派の集会を覗いてみたら【潜入ルポ】

20241203issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年12月3日号(11月26日発売)は「老けない食べ方の科学」特集。脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす最新の食事法。[PLUS]和田秀樹医師に聞く最強の食べ方

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

海底ケーブル破損、スウェーデンが中国船に調査協力を

ビジネス

トヨタ、次世代EVレクサス車の生産延期検討 27年

ワールド

政府が政労使会議、石破首相「今年の勢いで大幅な賃上

ワールド

香港最高裁、同性カップルの相続や住宅の権利認める
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 4
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 5
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 6
    テイラー・スウィフトの脚は、なぜあんなに光ってい…
  • 7
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 8
    早送りしても手がピクリとも動かない!? ── 新型ミサ…
  • 9
    バルト海の海底ケーブル切断は中国船の破壊工作か
  • 10
    日本株は次の「起爆剤」8兆円の行方に関心...エヌビ…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 9
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 10
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story