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日本の大学にもパレスチナ支持デモが広がっているが......
一方で、イスラエルとの外交も活発です。準英語圏として、テクノロジー関連の産業で日本より進んだ分野も出てきたイスラエルとは、経済交流、文化交流も盛んに行われていました。その結果として、パレスチナ自治政府、イスラエルの両国と良好な関係を維持している日本は、その外交姿勢そのものが「二国家体制」という解決策への強いスポンサーとして機能しているのです。
したがって、日本の大学生は「アメリカの大学に続こう」などと考える必要は全くありません。一部には「アメリカの学生たちの要求を踏襲し、イスラエルや関係企業との連携に関する情報開示と資金引き揚げを求める」などという声明を出す動きもあるようですが、これもお門違いです。
それだけではありません。現在、オランダのハーグにある国際刑事裁判所(ICC)ではカーン主任検察官が、イスラエルのネタニヤフ首相やハマスのガザ地区トップのシンワル指導者など、双方の合わせて5人に対して逮捕状を請求しました。容疑は戦争犯罪や人道に対する犯罪の疑いです。
このうちイスラエル側は、ネタニヤフ首相とガラント国防相の2人に対してで、民間人を飢餓に陥らせ、また意図的に民間人に対して攻撃を行ったりした戦争犯罪の容疑です。また、ハマスの方は、シンワル指導者や、ハニーヤ最高幹部ら3人に対するもので、昨年10月7日のイスラエルに対するテロ攻撃で民間人を殺害し、少なくとも245人を人質に取った行動は同じく戦争犯罪の容疑があるとしています。
バイデンは反対、マクロンは支持
この逮捕状請求という動きには、当事者の双方だけでなくアメリカのバイデン政権も激しく反発しています。一方で、フランスのマクロン大統領は逮捕状請求を支持すると表明して、世界に波紋を投げかけました。
実はこのICCのトップ、つまり国際刑事裁判所の所長は日本人の赤根智子氏です。赤根氏は、既にウクライナでの戦争犯罪容疑により、ロシアのプーチン大統領に対して逮捕状を出しています。その結果として赤根氏はロシアから指名手配を受けるという報復を受けていますが、これには全く屈してはいません。
では、赤根氏は全く個人の思想や思いつきでこのような行動をしているかというと、これは違います。1982年に検事任官されて以来、教育や国際貢献などの場に活動を広げつつも、赤根氏は一貫して日本国政府の法務省の職員でした。そして現職のICC所長というポジションも、加盟国である日本を代表しての就任と位置付けることができます。
今回の一件で、赤根氏のICCが正式に逮捕状を発行するところまで判断するかは分かりません。そこには厳密な国際法の法律論に加えて、国連外交上の様々な考慮が重なることは避けられないからです。ですが、少なくとも赤根氏が所長を務めるICCの検事がイスラエルとパレスチナの双方の戦争責任者に対して戦争犯罪の容疑で逮捕状を請求しているという事実は、このことだけでも非常に重たいものがあります。
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