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2024年、円安の出口と日本経済のバランスをどう取るか?
円安解消と経済失速のバランスをどう取るか、日本経済は難しい舵取りを迫られている StreetVJ/Shutterstock
<このまま円安政策を継続することはできないが、急速に円高に振れて多国籍企業の収益がしぼんでしまえば国内経済も暗転する>
2023年も大詰めとなってきました。年の瀬になって、日本の生産性がOECD加盟国で30位と過去最低となったというニュース、さらには1人あたりGDPがG7諸国の中で最低になったなどの暗いニュースが出ています。来年は、先進国の「窓際」と言われる日本経済の競争力について、衰退をどう食い止めるのかの正念場になりそうです。
そこで気になるのが円相場です。長く続いた「異次元の金融緩和」をどう終わらせるのか、そもそも終わらせるべきなのか、2024年は年初からこの問題と向き合う年になります。
2012年の暮れ、今からちょうど11年前に、いわゆるアベノミクスの一つとして、異次元緩和が始まりました。この時期は、今はとは違って円高が問題になっていました。円高が輸出産業の足を引っ張っていること、また2008年のリーマンショック、さらに欧州金融危機や中国のバブル崩壊が重なった中では、日本経済が他の産業国と比較すると「比較的マシ」ということで円が買われる危険がありました。そのために、円を意図的に安く誘導することが景気を改善するという考え方がベースにありました。
その結果として、株価は上昇しましたが、その恩恵は一部にとどまりました。また、円安になったからといって、空洞化した産業が戻ってくることはなく、電力不安や規制緩和の遅れなどから空洞化はかえって進行しました。ですが、円安政策は続行されました。その一方で、空洞化が進行する中で、日本の多国籍企業は海外での生産と、海外での販売の比率を高めていました。
つまり、利益の過半は国内ではなく、海外で生み出されるわけです。その場合に、ドル、ユーロ、人民元ベースで発生した利益は、円安の場合は円に換算すると膨張して見えます。膨張というとやや言い過ぎで、円から見れば明らかに大きくなります。その結果として、多くの多国籍企業は史上空前の利益を計上していました。
日銀が危惧する「円高不況」
ということは、現在、仮に金融政策を急速に円高へ振った場合、その弊害としては、日本発の多国籍企業の収益が円から見た場合に大きくしぼんでしまうことが考えられます。本当は、海外での利益はほとんどが海外で再投資されるので儲けたカネは日本国内には還流しません。また稼いだ利益を配当しても、多くは国外の株主に流れてしまいます。基本的に海外での生産、販売活動は日本のGDPにカウントされません。ですから、現在の「空前の利益」というのも半分は幻です。
ですが、仮に円高になって、その「幻かもしれない海外での利益」が円建てで大きくしぼんでしまうようですと、国内経済のムードは大きく暗転します。輸出に頼り貿易が黒字であった時代とはまた別の「円高不況」が訪れるかもしれません。賃上げを進める政策も大きく足を引っ張られる可能性があります。日銀の植田総裁は、この点を深く警戒しているのだと思います。
では、このままずっと円安政策を継続することは可能かというと、そこには難しさがあります。今はまだ、国家の債務というのは、ある程度までは個人金融資産で相殺されています。ですが、やがてそのバランスが崩壊し、それでも円安が継続し、また空洞化が加速化して国内の競争力がしぼんだままですと、ある臨界点を超えたところで、国債が大きく売られ、円の価値がどんどん下がり、悪い金利高が暴走するかもしれません。
その頃までには、日本経済は規模的に縮小していて、IMF(国際通貨基金)から見て、大きすぎて潰せない規模を割り込んでいるかもしれません。そうなると、現在の円安政策が行き過ぎた延長には、債務不履行、つまり国家としての破綻というシナリオが可能性として出てきます。
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