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チャットGPTは、アメリカ社会をどう変えるか?
アメリカ社会では様々な分野で議論が始まっている Useba011d64_201/iStock.
<英語で使用する限りでは、文章の作成・添削の能力は実用レベルに達している>
2022年11月30日に、サンフランシスコに本拠を置くベンチャー企業 Open AI 社は、AI(人工知能)が人間と対話する「チャットポット」をインターネットのパブリックな空間でリリースしました。UI(ユーザーインターフェース)は簡単で、ユーザーが文章でポットに質問を投げかけると、文章で回答を返してくるというスタイルです。これが現在、世界中で話題になっているチャットGPT の始まりでした。
私が、その存在と効果を知ったのはリリースから約1カ月弱後の12月後半でした。その時は英文のネイティブチェック的な使い方を、テック技術者のアシストで経験したのですが、その精度に驚嘆したのを覚えています。それから1カ月経過した本年の1月末には、かなり広範な社会現象になり、2月に入るとユーザーが3億人を超えたとして一般のメディアでも話題にされるようになりました。
その後、サーバの容量不足でサービスを受けるのに時間がかかる時期もありましたが、本稿の時点では容量の追加や、日々のアップデートなどがされているらしく、接続については、やや改善されています。運営サイドも、2月13日には「初期リリース」から「安定的リリース」にフェーズを進めています。また、混雑時に優先して使用ができる有料サービスの「PLUS」も始まっていますが、本稿の時点ではキャパを超えているらしく、登録しようとすると「ウェイトリスト」に入れられます。
ちなみに、現時点では日本語のデータ蓄積量はまだまだ少ないようで、事実を問うような質問ではどんどん誤情報が返ってくるのが現状です。試しに、今現在「旬」である芸能人3人について入力してみたところ、1名は「知らない」と言われ、残りの2名については全く間違った情報が返ってきました。ビジネスレターの様式などはある程度は習得しているようですが、日本語特有のニュアンスの表現に関しては、まだまだ実用レベルにはなっていません。
英語の膨大な言語データ
ですが、英語の世界では違います。そもそも Open AI 社が英語圏の企業ということもありますが、恐らく膨大な言語データを有しているものと思われ、まず文章の作成や添削の能力としては、ハッキリ申し上げて実用レベルに達していると思います。現時点では、アメリカ社会もその実力を認め、その上で様々な分野で議論が始まっているところです。今回は4つの分野についてお話したいと思います。
1つ目は、教育の分野です。情報を検索するということでは、既にネットに多くのツールがありますが、チャットGPT を使うと正確な英文が簡単に書けてしまう、これは画期的なことです。まず、高校や大学では宿題のエッセイを書くのに、学生が使い始めており、早速論争になっています。例えば、調査と作文を一括で処理させるような行為が横行するようだと、学生の学習体験にならず学力が向上しないという指摘がされています。このため原則禁止にする学区もあり、学校貸与のデバイスでは接続を遮断するケースも見られます。
一部の大学では、チャットGPT が出力してくる英文の「クセ」を見抜くソフトを導入して「不正行為」の摘発に乗り出すとしているケースもあります。深刻な問題は、大学入試の小論文(エッセイ)試験です。アメリカの場合は、在宅受験であり、しかも教員や親などから英語の「言葉遣い」のチェックを受けることは特に禁止されていません。ですが、最初からAIに書かせたエッセイが横行すると入試制度が混乱してしまう懸念があります。今年の入試(原則として昨年の12月末締め切り)では、表面だった問題にはなっていませんが、次年度へ向けては各大学が対応に追われることと思います。
一方で、修士レベル以上では、文章作成というのが「論文執筆の後工程」に過ぎないという考え方を取るならば、チャットGPT というのは論文の生産性を劇的に高めるのは事実です。また、英語力が発展途上の留学生に取っては、論文執筆の心強い味方になります。もちろん出力された英文が自分の論旨に外れていないかを確認する工程を省略することはできませんし、ある程度はオリジナルな表現を入れるべきですが、こうした使用法は否定できないという意見はあります。
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