コラム

トランプ「貿易戦争」の狙いは何か?

2018年03月27日(火)16時15分

3点目としては、これは推測ですが、中国に対して大きな圧力をかけておいて、それを中国との取引材料にしようという可能性です。背景にあるのは、北朝鮮問題であり、米朝会談構想がうまくいかない場合は、最後は習近平に登場してもらう、その際に輸入制限や制裁関税の「解除をちらつかせる」ことで、ゲームの「カード」となるわけです。

この点に関しては、北朝鮮の高官(金正恩本人という見方も)が3月26日に北京入りしたという報道があり、もしかしたら米中は水面下で「取引」をしているのかもしれません。トランプとしては選挙戦の時から「北朝鮮問題は習近平に解決させる」などと主張してきたわけで、仮に上手くいけば、その「公約」が実現することになります。あくまで仮の話ですが。

このように、今この時点でムチャクチャとも言える手法で「中国への貿易戦争」を仕掛けた背景には、様々な要因を考えることができます。

一方で、鉄鋼・アルミ関税について日本を対象から外さなかったのは、80年代の貿易戦争を記憶している世代のレトロ的な感情論に媚びる作戦であり、結構厄介かもしれません。ただこちらに関しても、韓国と「FTA再交渉」を進めているように「落とし所としての日米FTA」構想があるという見方も可能です。

ですから、対中国にしても、対日本にしても「貿易戦争」に訴えているという行動には一定の合理性はあるわけです。ですが、いずれにしても21世紀という国際分業の時代に、経済合理性に反する行為に訴えているのは間違いありません。ということは、まわりまわって「現在の実業界」に密接な利害を持っている共和党議員団とは距離感が出てくるでしょう。そう考えると、習近平との「取引」についても、日本との「FTA」にしても11月の中間選挙までに成果を出さなくてはならないことになります。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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