コラム

フリン補佐官失脚が意味する、トランプ政権の抱える脆さ

2017年02月16日(木)15時10分

3つ目の疑問は、外交はどうなるのか、具体的には対ロシア政策はどうなるのかという問題です。今回のフリン失脚劇と並行して、ロシアの情報収集艦船がコネチカット州の沖に出没していることが問題視されるなど、対ロシア外交に関してかなり雰囲気が変わって来ているのは事実のようです。

例えばトランプ大統領は、今週15日に「ロシアはクリミアを奪った」という反ロシア的なツイートをしていますし、ここへ来て「ロシアとの関係改善政策」という姿勢から豹変しつつあるのかもしれません。

その一方で、15日には国防総省筋から「シリア領内におけるISIS掃討作戦にアメリカは地上軍を派遣する用意がある」というニュースが流れたりもしています。仮にそうだとすると、選挙戦の当時からトランプ氏の主張していた「シリアはアサド政権とロシアに任せる」という方針が崩れ始めているのかもしれません。

【参考記事】トランプの「迷言女王」コンウェイ、イバンカの服宣伝で叱られる

このように今回のフリン補佐官辞任劇は、さまざまな憶測を呼ぶものではあるものの、現時点では今後の方向性はまだ見えてきていません。そんな中、CNNやNBCなどリベラル寄りのメディアは、一斉に政権追及の動きを強めています。

一つのターゲットはフリン氏に関して、具体的な法令違反があったのかどうか、そして、仮にそうだとして司法省が強制捜査に踏み切るかどうかという問題です。また、その次の段階としては、フリン氏だけでなく、選挙戦を通じてトランプ陣営が「組織ぐるみでロシアと癒着していた」可能性を追及する構えです。

こうしたメディアの追及が、どこまで「効いてくる」かも現時点では分かりません。ただ、ここへ来てトランプ大統領自身が「フリン氏は(FBIやCIAなどの)違法なメディアへのリークによって辞任に追い込まれた」と発言するなど、大統領自身が「ダメージコントロール」について、ブレーンと緻密なすり合わせを「していない」気配も濃厚に漂ってきています。

特に今回の「ロシア・スキャンダル」に関しては、政界もメディアも従来とは真剣度が違う中で「もう一つの真実」的な言い逃れはできない雰囲気が出てきています。そうなると、この政権が「守勢に回った際」には「意外な脆さ」を見せる可能性も感じられます。アメリカ政治は日替わりで局面が変化する流動的な情勢となってきました。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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