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ピート・ローズの愚痴をスルーしたイチロー選手の「選球眼」
記録達成後の会見で笑顔を見せたイチロー選手 Jake Roth-USA TODAY Sports/REUTERS
<ピート・ローズが付けた、日米通算の安打記録への難癖を見事にスルーしたイチロー選手。ところが、この「ローズ発言」への反動から、アメリカで今回の偉業が大きく評価された一面もある>
マイアミ・マーリンズのイチロー選手が、日米通算で4256安打の記録を越えて4257本目を打ち「ピート・ローズを越えた」ことが、大きな話題となりました。
これに対して、ピート・ローズ本人が「イチロー選手の記録達成まで3本」という時点で「日本の記録をカウントするのなら、自分の高校時代の安打数も入れてくれ」などと発言。さらには「タフィ・ローズ(元近鉄)が日本で55本ホームランを打ったが、アメリカではダメだっただろ」というような「屁理屈」まで付けました。
この発言に関して一つ指摘しておきたいのは、ピート・ローズという人物の立ち位置です。ローズは、レッズの監督時代の1989年に野球賭博への「関与」を指摘され、球界から今でも永久追放が解けていない人物です。
昨年のオールスターでは、新任MLBコミッショナーのロブ・マンフレッドから部分的な名誉回復を受け、「各球団のベスト4選手」に選出されるという形で表彰されました。とは言っても「野球殿堂」には絶対に入れないことが事実上確定しています。
【参考記事】リングと米社会で戦い続けた英雄アリが語った奇跡の一戦
そのローズから見れば、イチロー選手というのは「すでに野球殿堂入りが確定している」わけで、何ともまぶしい存在なのです。ですから、こうした愚痴を言ってみたくなるのは、非常によく理解できます。
もちろん、これだけの著名人ですから、この種のイヤミや愚痴というのは、基本的には我慢するべきだと思います。ですが、身から出たサビとはいえ、「名誉」を生涯取り上げられた人間として、どうしても言ってしまったのだと思います。
ですから、このローズの発言を受けたイチロー選手が「ローズに祝福してもらえないなら自分としても興味ない」という絶妙な「スルー」を決めたのは、見事な「選球眼」だとしか言いようがありません。
ところが、人間の心理というのは意外なもので、「ローズ発言」の反動で、イチロー選手の4257という「日本球界込みの数字」が、アメリカでも意外なほどの評価を受けた面があるのです。例えば、記録達成をしたのはサンディエゴで、イチロー選手にとっては「敵地」だったのですが、達成の瞬間には場内の電光掲示板に大きな表示がされ、観客は大変に盛り上がって祝福していました。
また、この「日本の記録を数えるかどうか?」という点について、アメリカの球界では賛否両論が巻き起こっています。その結果として、とりあえずの平均的な理解というのは「日本のプロ野球はアメリカのマイナー以上」なのだから、イチロー選手が仮に「メジャーでの3000本安打」を達成したとして、「これにプラスして、その前に1278本のヒットを日本で打っていた」ことは、「とにかく偉大である」という評価です。
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