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日本で保守派を巻き込んで同性婚を合法化する方法(パックン)
同性婚の権利を保障する法案に署名し、同法の成立を喜ぶバイデン米大統領ら(2022年12月)REUTERS-Kevin Lamarque
<アメリカで同性婚の権利を保障する法律が成立したが、保守派も協力して成立したこの法律は日本にも応用できそうだ>
毎年この時期に家族に怒られることがある。12月中旬になると、僕は秋以降に子供に与えたゲームや洋服、スポーツ用具などをこっそり没収して、箱に入れ直すのだ。そして、それをきれいに包装して、クリスマスツリーの下に置く。子供はクリスマスの日にプレゼントの多さに一回喜ぶが、箱を開けて「なんだ......すでにもらっているヤツじゃん!」とか「これ、ずっと探してたよ!」と、憤慨するわけ。
アメリカ連邦政府は最近、同性愛者の方々にこれと似たような、ありがたみのなさそうなものを贈った。というのも、「同性同士の結婚は合法だ」という内容の法律を作ったのだ。アメリカで同性婚は2015年の最高裁判決ですでに合法とされている。すでにもらったものを、包み直して再度プレゼントしているだけ。喜ぶはずがない......。
と、思いきや! 今回の法律成立は同性愛者やその味方の人々から大絶賛されている。「怒られサンタ」の僕からみて、少し悔しいほどだ。
何が違うかというと、危機感だ。現在、最高裁の判事は9人中6人が保守派。保守が決定権を持つなか、今年6月に約50年前の判決を覆して「人工妊娠中絶の権利は憲法で保障されていない」という、新たな判決を出した。それを受けて、中絶への規制が全体の半数ほどの州に広がりつつある。おもちゃやゲームどころじゃない。女性からみれば、すでに与えられたとても大事なものが没収された気分だ。
同性婚「できない」と「認めない」の差
6月のこの判決の意見書で、保守派のクラレンス・トーマス判事は同性同士の結婚の権利を認めた2015年の判決をも見直すべきだと主張した。女性の次は、同性愛者が権利の略奪に遭いそうな風が吹いていたのだ。
これは例えばアニメ映画でおなじみのいじわるなキャラクター「グリンチ」が、ある町のクリスマス・プレゼントを全部奪った上「次はあなたの町だ!」と襲撃を宣言しているような状態だ。当然、同性婚の権利を重視する人々の間で、危機感が急上昇。だから、今回の立法がありがたく感じられるわけ。グリンチ判事たちのおかげだ。
実は、そもそもこの法案は可決できると誰も思ってもいなかった。出発点は、民主党が支持基盤のリベラル派へのメッセージ発信のためにだけにこれを提案しようとしたことだった。しかし意外にも、何十年も前から「同性愛反対!」と訴えてきた共和党の議員も、法案に肯定感を示し始めた! せっかくのチャンスを逃がすまいと、両党の議員が現実的な立法過程に乗りだした。
「現実的」とは、法律の内容自体をかなり限定的にものに変えたこと。実は今回の法律が成立しただけでは、同性愛者はどこの州でも結婚できるようになるわけではない。もし2015年の判決が無効とされた場合、同姓婚ができない州もあった2015年以前の状態に再び戻るだけだ。
しかし今回の法律のおかげで、同性婚ができない州があっても、認めない州はなくなることになる。これが大きい! つまり、同性カップルの婚姻届を受理してくれない州はあっても、他の州で結婚した場合は、その婚姻関係をどの州も認めざるを得なくなるのだ。
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