最新記事
シリーズ日本再発見

日本の女性議員比率はアジアでも最低レベル──男女格差の是正には強制力が必要だ

Rectifying Japan's Political Gender Inequality

2020年11月26日(木)16時10分
ニック・ストアーズ(ディプロマット誌)

男女間の賃金格差もひどい。格差の大きさでは世界の153カ国中121位。夫婦別姓を可能にする法改正も、まだ実現していない。

日本の人口の半分以上は女性だ。たとえどんな政権であれ、常態化した女性への偏見の解消に取り組むことを優先してほしい。しかし今の自民党が自発的に動くとは思えない。女性の社会参加が広がれば経済的な恩恵が得られるという議論で、説得するしかないのかもしれない。

景気の刺激にも有効

複数の研究によると、一般に女性議員は汚職に対して厳しく、公共事業の無駄にもよく目を光らせる。もちろん職場のセクハラや賃金格差の解消にも力を尽くし、子育て世代のために公的保育を充実させることにも熱心だ。

そういうことが実現すれば日本でも女性の活躍する舞台が増える。その経済効果はGDPを大きく押し上げる可能性がある。新型コロナウイルスで経済が疲弊している今、女性の進出を促すのは景気の刺激にも有効だろう。

加えて、女性政治家は権力の座にあっても協調を重んじる傾向にあり、超党派での問題解決を好むとされる。また野田聖子に言わせると、女性議員の増加は少子化対策の強化にもつながる。出産・育児にまつわる不安やストレスの軽減には、賃金や就労条件の改善が一番だ。

言うまでもないが、立候補者や議員のクオータ制は理想の解決策ではない。有能な男性候補の排除にもつながりかねない。しかし現状はもっと差別的で不公平だ。

今はまだ、時代遅れの社会的な因習と威圧的で頑強な縁故主義が女性の政治参加を阻んでいる。近隣諸国に比べて立ち遅れている現状を変えるには、強制力のあるクオータ制を導入するしかない。

女性議員が「無視できない少数派」を形成でき、世間の見る目も変わったら、クオータ制は廃止すればいい。だがそこに至るまでの過程では強制力のある法制で女性議員を増やすことが必要だ。

日本で女性は人口の51%を占めるが、女性議員は10%もいない。口先だけの安倍が去った今、次の総選挙では女性が躍進し、政治を動かせるだけの議席を獲得できることを願うばかりだ。

From thediplomat.com

<本誌2020年10月6日号掲載>

<関連記事:逃亡ゴーンの「日本の不正な司法制度」批判は的外れ
<関連記事:コロナだけじゃない、「二重苦」と戦う日本の飲食業界

japan_banner500-season2.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米貿易赤字、3月は0.1%減の694億ドル 輸出入

ワールド

ウクライナ戦争すぐに終結の公算小さい=米国家情報長

ワールド

ロシア、北朝鮮に石油精製品を輸出 制裁違反の規模か

ワールド

OPECプラス、減産延長の可能性 正式協議はまだ=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 10

    「みっともない!」 中東を訪問したプーチンとドイツ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中