日本の女性議員比率はアジアでも最低レベル──男女格差の是正には強制力が必要だ
Rectifying Japan's Political Gender Inequality
では、なぜ日本はこの道を歩んでこなかったのか。その答えは停滞した政治そのものにある。韓国では、民主化運動が活発化した1980年代に女性有権者にアピールする政治家が登場し、結果として95年の女性発展基本法の採択につながった。これを受けて韓国政府は2000年に全政党にジェンダー・クオータの採用を求め、以後もその圧力を強めてきた。
同様の展開をたどったのが台湾だ。台湾では87年に戒厳令が解除され、合法化された民主進歩党(民進党)はさまざまな社会的不平等を取り上げて与党・国民党を激しく追及した。そのうちの問題の1つが男女格差だった。そして96年の選挙では、民進党が立候補者の25%を女性に割り当てた。これでジェンダー・クオータが現実になった。
続く2000年の選挙では民進党が勝利した。国民党も追随せざるを得なくなり、次の選挙では一定数の女性候補を擁立することになった。05年には当時の民進党・陳水扁(チェン・ショイピエン)政権が憲法を改正し、各政党の比例代表候補の半数以上を女性にすることを義務付けた(ただし議席数では15%がやっとだった)。
日本の場合も、政権交代の機運が高まった時期には女性への「権限付与」が選挙公約としてクローズアップされてきた。日本史上最も熱い戦いの1つとなった03年の総選挙に際しては、与党・自民党が20年までに指導的な地位にいる女性を30%に増やすという長期目標を発表した(もちろん実現していない)。
実際に政権交代が起きたのは09年のことだが、その2年後、当時の民主党政権はジェンダー・クオータ制の法制化を打ち出した。12年の選挙で自民党が圧勝したため、これは実現しなかったが、それでも自民党は主要な選挙公約の1つに「女性の活躍」を掲げたのだった。
だが不幸にして、日本では政権交代の機会が少ない。自民党は1955年以来、ほぼ一貫して政権を維持している。だから彼らは有権者を侮り、大胆で進歩的な政策を不要なリスクと見なしている。安倍政権の掲げた「ウーマノミクス」もリップサービスの域を出なかった。
2年前の内閣改造で起用した女性閣僚は1人(片山さつき内閣府特命担当大臣)だけ。片山について安倍は、彼女には「2人分も3人分もの存在感がある」と言ってのけたのだった。
15年の女性活躍推進法に法的拘束力はなく、現実的な影響力を欠く。今年7月には「指導的な地位にいる女性を30%に増やす」という目標の達成期限を30年まで先送りした。自民党はメディア受けのいい口約束をするだけで、約束を守らなければ選挙で負けるという危機感とは無縁だ。
それでも今回の首相交代は好機かもしれない。菅は未知の新時代へ国家を導く任を負う。長期的で新鮮な発想が必要とされ、広く社会に支持を求めなければならない。
菅は官房長官時代の2015年に、女性は「子供を産んで貢献」すべきだという問題発言をして不興を買った。だからこそ、今度は女性登用に向けて果敢な姿勢を打ち出すのが賢明な選択だろう。
女性議員が増えれば、女性の抱える諸問題で進展が期待できる。喫緊の課題は職場におけるセクハラだ。日本はOECD加盟国中で、この点に関する法制を欠く数少ない国の1つだ。