老人自ら死を選択する映画『PLAN 75』で考えたこと
ラストの長回しや仕切り入りのベンチのシーンなども含めて、プロットとは別の位相のディテールに早川千絵監督のこだわりは感じる。今さら書くまでもないけれど映画はディテールだ。ミチを演じる倍賞千恵子だけではなく高齢な俳優たちの自然な演技と相まって、そのディテールの積み重ねは成功している。
でもやっぱり足りない。全部寸止めなのだ。残念。
見ながら気付く。ヒロムの役回りは、アウシュビッツで同胞のユダヤ人虐殺に加担したゾンダーコマンドだ。なぜなら年を取らない人はいない。誰もがたどる道。
特に若い世代に言いたい。本当だよ。あっという間だからね。
『PLAN 75』(2022年)
©2022『PLAN 75』製作委員会/Urban Factory/Fusee
監督/早川千絵
出演/倍賞千恵子、磯村勇斗、たかお鷹、河合優実
<本誌2023年3月21日/28日合併号掲載>
偶然が重なり予想もしない展開へ......圧倒的に面白いコーエン兄弟の『ファーゴ』 2024.11.22
韓国スパイ映画『工作』のような国家の裏取引は日本にもある? 2024.10.31
無罪確定の袴田巖さんを22年取材した『拳と祈り』は1つの集大成 2024.10.19
『シビル・ウォー』のテーマはアメリカの分断だと思っていたが...... 2024.10.12
台湾映画『流麻溝十五号』が向き合う白色テロという負の歴史 2024.09.10
アメリカでヒットした『サウンド・オブ・フリーダム』にはQアノン的な品性が滲む 2024.08.30
成熟は幻想、だから『ボクたちはみんな大人になれなかった』の感傷を共有する 2024.07.27