映画『橋のない川』で描かれるこの国の部落差別は過去形になっていない
クラスメイトの女の子に手を握られた孝二は好かれていると勘違いするが、部落民は夜に蛇のように体温が下がると聞いたのでそれを確かめたのだと打ち明けられる。修学旅行に行けば、旅館で孝二と同じ部屋で眠る級友は誰もいない。
観ながらつらい。でも現実だ。差別の理由は生まれた区域が違うから。苦し紛れにそう答えた僕に、海外の学者やジャーナリストたちはバカじゃないかとあきれていた。僕もそう思う。水平社宣言から今年で100年だが、この国では今もこの差別を過去形にできていない。
『橋のない川』(1969年)
監督/今井 正
出演/北林谷栄、長山藍子、高宮克弥、大川 淳
<本誌2022年6月14日号掲載>
偶然が重なり予想もしない展開へ......圧倒的に面白いコーエン兄弟の『ファーゴ』 2024.11.22
韓国スパイ映画『工作』のような国家の裏取引は日本にもある? 2024.10.31
無罪確定の袴田巖さんを22年取材した『拳と祈り』は1つの集大成 2024.10.19
『シビル・ウォー』のテーマはアメリカの分断だと思っていたが...... 2024.10.12
台湾映画『流麻溝十五号』が向き合う白色テロという負の歴史 2024.09.10
アメリカでヒットした『サウンド・オブ・フリーダム』にはQアノン的な品性が滲む 2024.08.30
成熟は幻想、だから『ボクたちはみんな大人になれなかった』の感傷を共有する 2024.07.27