無様なのにキラキラ輝く『ばかのハコ船』は原石のよう
ストーリーは書けない。書いても意味がない。明確な起承転結はないし山場もない(強いて言えばラスト近くでマンホールに落ちる)。でも映画だ。映画でしかありえない作品だ。その後も山下と向井は作品を量産し続けている。つまりヒットメーカーだ。撮影の近藤龍人も話題作を撮り続けている。3人の大阪芸大の同期生は、今の日本映画にとって欠かせない存在になった。
しかしよほどの映画ファンでないかぎり、この作品は見逃していると思う。ほとんど話題にならなかった。だから断言する。3人の原点がここにある。無様で単調で卑屈で不細工。そして何よりも恥ずかしい。でもキラキラ輝く原石のような映画だ。
『ばかのハコ船』(2002年)
監督/山下敦弘
出演/山本浩司、小寺智子、細江祐子、山本剛史
<本誌2020年8月11日/18日合併号掲載>

アマゾンに飛びます
2025年4月8日号(4月1日発売)は「引きこもるアメリカ」特集。トランプ外交で見捨てられた欧州。プーチンの全面攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
『エクソシスト』は「怖い」「気持ち悪い」だけじゃない、滋味にあふれた名作ホラーだ 2025.04.04
のちの巨匠2人が組んだ脱獄映画『ミッドナイト・エクスプレス』は成長なき物語 2025.03.07
韓国現代史の暗部を描くポリティカル・ノワール、『ソウルの春』の実力 2025.02.22
タイトルもストーリーも奇妙だけど、甘さと苦みの配合が絶妙な『ガープの世界』 2025.01.23
ナチスへの復讐劇『手紙は憶えている』とイスラエルをめぐるジレンマ 2025.01.17