武士道と死刑制度──『花よりもなほ』で是枝裕和が示した映画の役割
是枝と死刑制度について話したことはない。ただ映画を見れば、人が人の命を奪うことについてどのように考えているのか、それがよく分かる。もちろんこれは史実ではない。是枝の創作だ。でも見ながら気付く。武士がみな律儀で勇敢だったはずはない。武士道よりも家族の幸せを願う侍だっていたはずだ。むしろそのほうが普通かもしれない。定型を壊す。固定化した思い込みを覆す。それも映画の重要な役割だ。
『花よりもなほ』(2006年)
©2005 「花よりもなほ」
フィルムパートナーズ
監督/是枝裕和
出演/岡田准一、宮沢りえ、古田新太、浅野忠信
<本誌2020年6月2日号掲載>
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