ソ連の行く末を言い当てた「未来学」...今こそ知るべき4人の権威が見通していたこと
アルビン・トフラー(Alvin Toffler)
世界で最も高名な未来学者・フューチャリストの一人と言われるのがアルビン・トフラー(1928~2016年)だろう。著書を読んだことがなくとも、『未来の衝撃』(原題:Future Shock、1970年)や『第三の波』(原題:The Third Wave、1980年)の書名は聞いたことがあるのではないだろうか。
ニューヨークで生まれ育ったトフラーは、大学卒業後に金属鋳造の修理工や溶接工として働きながら、商品が大量に生産され、消費される社会に対する疑問を肌身で感じた。そうした経験を土台とし、新聞記者、コラムニスト、コンサルタントといった異色の経歴を歩む。
『未来の衝撃』は世界で販売数数千万部もの爆発的なヒットを記録した。和訳書のサブタイトルは『激変する社会にどう対応するか』。情報化社会へと突き進む世界のありようとその後をつぶさに読み解いていった。社会が当時と比べて一層加速度的に激変している現代に生きていたら、トフラーは何を感じ、伝えただろうか。
情報化社会を予見し、見事に的確に言い当てた『第三の波』も、40 年以上前の刊行書でありながら、今なお多分に示唆的だ。人類による農業の興りが第一の波、産業革命が第二の波、そして第三の波としての情報化社会。その先にある世界とは、第四の波があるとすれば、それは何であろうか。デジタル化をそれと呼ぶ見方もあるが、今起きている世界の変化はもっと大きな、人間のあり方、生き方を根底から覆すような胎動ではないか。脳波、非言語コミュニケーション、動植物との会話──検討すべき論点は多い。
アーサー・クラーク(Arthur Clarke)
今回紹介する最後の一人はSF作家のアーサー・クラーク(1917~2008年)である。その名を知らずとも映画『2001年宇宙の旅』(原題:2001: A Space Odyssey)なら観たことがある人も多いのではないだろうか。クラークが脚本を担い、スタンレー・キューブリック監督のもとで1968年に映画化された。クラークによる同名の小説は、映画公開後まもなくして刊行された。
ホモサピエンスの先祖たる原始的な「ヒトザル」の眼前に、突如として現れる謎の石柱「モノリス」。映画はイントロのシーンで見る者を一気に惹きつける。
SFでありながら、真実味を帯びた描写は、現実以上に現実的とさえ言える。半世紀以上前にそうした作品が撮られた技術力、創造力はもとより、逞しい想像力に驚愕するばかりだ。
リアリティに溢れた描写の数々は、クラークと宇宙飛行士との親交から紡ぎ出された賜物とも言える。『2001年宇宙の旅』はSFでありながら文部省(現・文部科学省)の特選映画に指定されたほどだ。現実世界を考えるうえで想像力を掻き立ててくれる作品と見られていた。
同作品に限らず、時空間を超えて来たる世界を描いたクラークの作品に影響を受けた宇宙飛行士や科学者、あるいは映画監督は数知れない。クラークは、「ロボット三原則」を打ち立てたアイザック・アシモフやロバート・A・ハインラインと共に、「SF界のビッグ・スリー」として並び称されている。
こうした20世紀後半に頭角を現したフューチャリストの想像力と創造力に彩られ、未来学は徐々に実社会で応用されつつ、確かな地歩を占めていった。
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