コラム

2024年のK-POPを総決算 1年を振り返って実感するアーティストたちの「自信と貫禄」

2024年12月25日(水)20時10分

J-POPなど日本の音楽の影響も

日本のカルチャーが隣国に刺激を与えているケースは、実は他にもある。それは昭和・平成の歌謡曲で、「ギンギラギンにさりげなく」(近藤真彦)や「道化師のソネット」(さだまさし)、「雪の華」(中島美嘉)など、日本の人たちにとっては懐かしいヒットソングが現地で大きな注目を集めているのだ。


韓国のバラエティ番組『日韓歌王戦』で韓国のファンを獲得した歌心りえは1995年に音楽ユニット「Letit go」のメンバーとしてデビュー、現在はソロとして活動をしているベテラン。 

こうした曲の魅力を広めているのが、日本では無名に近い女性シンガーたちだったのが興味深い。彼女たちは日本のオーディション番組『トロット・ガールズ・ジャパン』の出身で、春にトロット(日本の演歌に相当するジャンル)系の歌手たちと対決する韓国のバラエティ番組『日韓歌王戦』に出演。そこで披露された日本の曲が老若男女問わず受けているのだ。おそらく「美しい曲を上手に歌う素晴らしさにあらためて気づく」という原点回帰なのだろう。これはダンスポップ至上主義だったK-POPシーンの劇的な変化であり、同時に新たな日韓交流の幕開けとなる出来事だけに、来年も引き続き動向を追っていきたい。

グローバル化で手にしたものは?


Bruno Marsとのコラボレーションで「APT.」が世界的に大ヒットしたROSÉは2025年はBLACKPINKでの活動がメインになる予定。 

一方で、韓国の宴席でよくやるゲームを題材にした「APT.」(ROSÉ & Bruno Mars)が米ビルボードのメインチャートでトップ10入りを果たし、大韓ヒップホップの魅力をこれでもかと詰め込んだG-DRAGONの「POWER」が国内の若者の間で評判になるなど、"韓国らしさ"を濃厚に感じさせるナンバーが次々とヒットする----。そのような2024年のK-POPシーンを俯瞰して思うのは、世界的な人気ジャンルになったことで手に入れた、韓国人アーティストたちの"自信と貫禄"である。他国の良いところを吸収しつつも、自身の美学も大切にする姿勢。これを維持し続けるK-POPは、今後も巨大化の一途をたどるに違いない。


11月23日に大阪で開催された韓国のケーブル局MnetのイベントMAMAに出演したG-DRAGONのステージには、他のBIGBANGのメンバーも登場、復活への期待を高めた。 

プロフィール

まつもとたくお

音楽ライター。ニックネームはK-POP番長。2000年に執筆活動を始め、数々の専門誌・ウェブメディアに寄稿。2012年にはK-POP専門レーベル〈バンチョーレコード〉を立ち上げ、イ・ハンチョルやソヒといった実力派を紹介した。現在は『韓流ぴあ』『ジャズ批評』『ハングルッ! ナビ』などで連載。LOVE FMLuckyFM楽天ポッドキャストの番組に出演中。著書は『K-POPはいつも壁をのりこえてきたし、名曲がわたしたちに力をくれた』(イースト・プレス)ほか。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

エーザイの認知症薬レカネマブ、EU「厳しい」条件付

ビジネス

米輸入物価、3月は‐0.1% エネルギー価格低下で

ワールド

カナダ、報復関税の一部免除へ 自動車メーカーなど

ワールド

米アップル、3月にiPhoneを駆け込み空輸 イン
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気ではない」
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ印がある」説が話題...「インディゴチルドレン?」
  • 4
    NASAが監視する直径150メートル超えの「潜在的に危険…
  • 5
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 6
    【クイズ】世界で2番目に「話者の多い言語」は?
  • 7
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    そんなにむしって大丈夫? 昼寝中の猫から毛を「引…
  • 10
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 7
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 8
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story