コラム

雄安新区の可能性を現地でみてきた

2017年08月29日(火)11時55分

雄安新区に指定された他の地域でも、容城県のアパレル製造業、安新県の製靴業などそれぞれ地場の産業が発展している。そうした産業の経営者たちは、雄安新区の計画に興奮しつつも戸惑いを見せている(『証券時報』2017年5月1日)。なぜなら新区計画により、この地域では早くも不動産価格の上昇が起き、すでに土地資産を持っている企業にとっては朗報だが、他方で、新区はハイテク産業をメインにするとされているので、既存の地場産業は立ち退かされるのではないかという懸念もあるからである。

この地域のこれまでの内発的な発展と、トップダウンの政策がもたらす新たな事業機会とをうまく調和させることを考えるべきであろう。雄安新区の計画とそれが引き起こす不動産ブームとが、地元の内発的発展を押しつぶしたあげく、ゴーストタウンだけが残るという最悪のシナリオだけは避けなければならない。

プロフィール

丸川知雄

1964年生まれ。1987年東京大学経済学部経済学科卒業。2001年までアジア経済研究所で研究員。この間、1991~93年には中国社会学院工業経済研究所客員研究員として中国に駐在。2001年東京大学社会科学研究所助教授、2007年から教授。『現代中国経済』『チャイニーズ・ドリーム: 大衆資本主義が世界を変える』『現代中国の産業』など著書多数

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