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新規上場スナップチャット、自称「カメラ会社」で何を狙うのか
上場申請書類のなかで同社は「カメラ会社」としての可能性について、「パソコンを起動するとカーソルが全ての作業のスタートになるがごとく、スマホではカメラ・スクリーンがスタートになる時がやってくる」と述べている。
実際にスナップチャットでは、まずはカメラからアプリがスタートするように構成されている。また同アプリのヘビーユーザー層であるミレニアル世代においてはセルフィーと呼ばれる自撮りが定着しており、「カメラから入る」というプロセスがすでに定着しつつあるのだ。
なお、セルフィーしてSNSに投稿しているかどうかで感性・思考・行動パターンが大きく異なり、世代の違いを端的に表していると米国では言われている。あなたはセルフィー×SNS投稿をしたことがあるだろうか。
次世代をリードするイノベーションのシーズ
米国において注目を集めマーケットシェアを伸ばしてきてはいるものの、利益ベースでは赤字企業であるスナップ社に高値の株価がついたのは、その成長性やイノベーションへの期待からである。
イノベーションという観点からは、スピーゲルCEOが2016年MIT Technology Reviewによる「35歳未満の35人のイノベーター」の1人に選出されているほか、2017年Fast Company誌による「世界で最もイノベーティブな企業50社」の5位に同社がランクインしている。
スナップ社では、変化に対応するレベルから、変化をもたらすレベルへと志向しており、イノベーションやR&D投資を積極的に行っている。昨年12月には、イスラエルの拡張現実(AR)のベンチャー企業を買収するなどM&Aにも積極的だ。
スピーゲル氏は、イノベーションを重ねていくことやチャレンジし続けていくことが同社の重要な企業文化であると語っている。特に重要なのは、真のイノベーションを実現していくためには、かつてエジソンが語ったように、試行錯誤が不可欠であり、失敗することもあると明快に言明していることだ。
これらのことから筆者としては、スナップ社の強みとは、「イノベーションを起こそうとする起業家精神×失敗を許容する企業文化×それを支えるだけの上場後の資金力」と定義している。
今回の上場により同社では34億ドルの資金調達を実現した。その資金が上記の企業文化のなかで使われていくことに大きな期待が持たれるのは当然だろう。
実際にスナップ社では、次世代をリードしていくようなイノベーションの"シーズ"を豊富に抱えている。
同社では、昨年9月にスペクタクルズというカメラ付き拡張現実眼鏡を発売している。これは同社が「カメラ会社」であると自社をリブランディングした際と同時期に発売されたものであり、ハードであるスペクタクルズとソフトであるスナップチャットの融合を目指したものである。
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