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新規上場スナップチャット、自称「カメラ会社」で何を狙うのか
同社の主な収入源である広告については、スマホ向けの縦型全面動画広告が特徴となっている。同社の動画広告は10秒以内でアプリの内容と融合性も高く、ユーザーの視聴率が高いことに定評がある。これは、同社の開発チームでは製品開発と広告開発を同時に行っていることが大きく貢献している。2016年のAdvertiser Perceptionsの広告主満足度調査では、2位のYouTube、3位のGoogleをおさえて1位にランクされている。
またスナップチャットは、米国でミレニアル世代と呼ばれる人口のボリュームゾーン層(2000年以降に成人したか社会に出た層)が多用しているサービスであることから、この層を取り込もうと、大手企業がスナップ社に広告投資を行っているほか、政府機関や官公庁なども積極的に投稿を行っている。
なぜ「カメラ会社」とポジショニングするのか
スナップ社の戦略を語る上で最も重要なことは、同社が自らを「カメラ会社」であるとポジショニングしていることである。同社のホームページでは以下の通り自社紹介を行っている。
Snap Inc.はカメラ会社です。
当社は、カメラを改革していくことにより、私たちの生活やコミュニケーションの方法を、更に素晴らしいものにできると確信しています。
Snapchatによって、自己表現の世界を広がり、毎日を楽しみながら、世界を体験し、その喜びを友だちと分かち合うことができます。
(原文ママ)
同社のCEOであるエヴァン・スピーゲル氏のこれまでの発言などをもとに筆者が分析した結果としては、「カメラ会社」であると自称している背景には、以下のような意義があると考えられる。
①「カメラ」の重要性
米国において「カメラ」は産業を牽引してきた歴史がある。1890年頃にはトーマス・エジソンがキネトグラフを発明し、その後同氏は初期の頃の映画産業を支配した。1957年にはNBC局がカラーでのテレビ放送を開始し、テレビ業界を席捲した。後に経営破綻したもののコダック社はかつて世界で最もブランド価値の高い企業だった。
スナップ社では、「カメラ会社」を標榜する一方で、「カメラを再発明する」と宣言している。これは、「再発明する」ことで新しく定義する「カメラ」事業によって、ネット業界のみならず、広く世界の産業界をリードしていこうとする意欲の現われであると筆者は考えている。
②ビジュアルコミュニケーションの重要性とスマホ時代のプラットフォーム
日本でもインスタグラムが急速にマーケットシェアを拡大しているように、スマホ時代においては、ビジュアルコミュニケーション、特に写真や動画の重要性がさらに高まると予想されている。米国では、スマホの所有者が2011年の35%から2015年には64%にまで上昇しているとのPew Researchの調査結果もある。
スマホにおいては従来の通信機器よりもさらにビジュアルコミュニケーションが重要であるとされており、そのビジュアルを撮影する手段としてのカメラの重要性はさらに高まるとスナップ社では考えているのだ。
【参考記事】「スナップチャット、お前もか」の創業ウラ話
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