コラム

新規上場スナップチャット、自称「カメラ会社」で何を狙うのか

2017年03月06日(月)15時10分

Brendan McDermid-REUTERS

<3月2日、NYSEに上場し、フェイスブックを超える34億ドルを調達した写真・動画共有アプリ「スナップチャット」運営のスナップ社。広告主満足度調査でグーグルを超える同社は「カメラ会社」を自称するが、果たしてその戦略とは?>

お化けのアイコンが目印で、投稿がすぐに消える機能が人気の写真・動画共有アプリ「スナップチャット」を運営する米スナップが3月2日、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場した。初値は公募・売り出し(公開)価格の17ドルを41%上回る24ドルだった。資金調達額は34億ドルで、2013年のフェイスブックの30億ドルを上回った。

筆者は2月11日から26日までの16日間、米国出張を行った。母校であるシカゴ大学ビジネススクールの学生に聞くと、同社が上場を直前に控えていたこともあり、ストラテジー&マーケティングの注目企業としてスナップ社を挙げる者が多かった。

また、トランプ大統領やペンス副大統領等も演説を行ったワシントンDC近郊で開催の保守政治活動集会(CPAC、共和党支持母体最大の年次総会)にも戦略分析のリサーチのために参加したが、そこで出会ったボランティアの学生に聞くと、「トランプ大統領のフォローはツイッター、応援のためのシェアはフェイスブック、でも普段からの友人とのやりとりはスナップ」という声が多かった。

日本での知名度は(ユーザーの多い10代、20代を除けば)まだまだかもしれないが、実はスナップ社は、平均デイリーアクティブユーザー数でツイッターを上回り、広告主満足度調査ではGoogle等をおさえて1位を獲得している。

本稿では、新規上場ということもあり、米国内外でさらに注目を集めているスナップ社の戦略分析をストラテジー&マーケティングの視点から実施し、あわせて同社が牽引している米ネット業界の最新動向を考察していきたい。

若者や女性から支持される「10秒で消える投稿」

スナップ社は広告事業を行うカメラ会社である。写真や動画などを送受信できるスマホ用カメラアプリ「スナップチャット」を開発・運営している。2016年第4四半期の時点で、平均デイリーアクティブユーザー数は1億5800万人とツイッターを上回っている。

特に若者や女性からの支持を集めており、ユーザーの約7割が34歳以下、女性の割合も約7割となっている。米国ではSNSユーザーの2割近くが同アプリを使用しているとのデータもある。

スナップチャットの基本機能は、写真や動画を友人同士で送り合うというシンプルなものである。特徴的なのは、投稿が10秒以内に消えるという機能であり、送ったデータが相手には蓄積されず、手軽にプライバシーを守りながら楽しむことができるという点が若者や女性から支持されている秘訣となっている。

追加的機能としては、ストーリー機能と呼ばれる写真や動画を保持していく機能もあるが、やはり保持できる時間は24時間までとなっている。スナップチャットはユーザーに対して「今ここ」に集中して気軽に楽しんでもらうことに専念しているが、スマートフィルターという機能では、特定のシーズンや特定の場所に限定して提供される限定スタンプのような機能も提供している。

【参考記事】安心を売る新SNSスナップチャットの実力

プロフィール

田中道昭

立教大学ビジネススクール(大学院ビジネスデザイン研究科)教授
シカゴ大学ビジネススクールMBA。専門はストラテジー&マーケティング、企業財務、リーダーシップ論、組織論等の経営学領域全般。企業・社会・政治等の戦略分析を行う戦略分析コンサルタントでもある。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役(海外の資源エネルギー・ファイナンス等担当)、シティバンク資産証券部トランザクター(バイスプレジデント)、バンクオブアメリカ証券会社ストラクチャードファイナンス部長(プリンシパル)、ABNアムロ証券会社オリジネーション本部長(マネージングディレクター)等を歴任。『GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略』『アマゾン銀行が誕生する日 2025年の次世代金融シナリオ』『アマゾンが描く2022年の世界』『2022年の次世代自動車産業』『ミッションの経営学』など著書多数。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独GDP改定値、第3四半期は前期比+0.1% 速報

ビジネス

独総合PMI、11月は2月以来の低水準 サービスが

ビジネス

仏総合PMI、11月は44.8に低下 新規受注が大

ビジネス

印財閥アダニ、資金調達に支障も 会長起訴で投資家の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story