コラム

グーグルの自動運転が「完全自動運転」である必然的理由

2018年05月25日(金)17時01分

グーグルの自動運転開発子会社「ウェイモ」の自動運転車(2018年5月9日、カリフォルニア州マウンテンビューにて) Stephen Lam-REUTERS

<早くも2009年に着手し、自動運転開発で先行するグーグルだが、そもそも何を目的としているのか。同社のミッションや事業構造を分析すれば、その必然が見えてくる>

EV化、自動運転化、サービス化などが進展している次世代自動車産業は、既存自動車会社と巨大テクノロジー会社との攻防という様相を呈している。メガテック企業のなかでも次世代自動車への進出という点で、現時点で頭一つ二つ、抜きん出たポジションにいるのはグーグルである。

2009年には自動運転に着手していたグーグル

グーグルが自動運転プロジェクトをスタートさせたのは、2009年のこと。それ以来のトピックを、いくつか時系列で挙げてみよう。 

2010年の10月、カメラ、ライダー(LiDAR、光線の反射で距離や位置を測定する装置)、レーダー等を搭載した自動運転車の開発を行っていることを発表。このときから「レベル4」(人間が運転に全く関与しない前提での自動運転レベル)の完全自動運転を目指すとグーグルは明言。

2012年3月、視覚障害者を乗せたテスト走行をYouTubeで公開し、同年5月にはネバダ州で米国初の自動運転車専用ライセンスを取得した。同年8月の時点で、すでに50万キロの走行テストを行ったと発表している。

2014年の1月には、GM、アウディ、ホンダ、ヒュンダイ、エヌビディア(自動運転のための人工知能用半導体メーカー)などが参加するOAA(オープン・オートモーティブ・アライアンス)という連合を発表。これはアンドロイドの車載化プロジェクト。アンドロイド端末と車載器との連携からスタートし、最終的には車載OS化を目論んでいると言われている。

2016年は、自動運転の歴史のなかで1つの転機となった年だった。同年7月、BMWがハンドル、アクセル、ブレーキ等がない完全自動運転車の開発を発表したことで、既存の自動車メーカーも以降、完全自動運転の実現に向けて本腰を入れる展開となっている。

それを受けグーグルも、12月に、それまで自動運転プロジェクトを進めてきた研究組織「グーグルX」による開発を終了、自動運転開発を担う子会社「ウェイモ」を立ち上げ、事業化に向けて再起動すると発表した。そして2017年にはアリゾナ州フェニックスにて一般ユーザーを乗せてサービス走行を開始するなど、開発を前倒しにしていく構えを見せている。

しかし、そもそもなぜ、グーグルは自動運転に進出しようとしているのだろうか。これを知るには、同社のミッションや事業構造、収益構造を分析する必要がある。

プロフィール

田中道昭

立教大学ビジネススクール(大学院ビジネスデザイン研究科)教授
シカゴ大学ビジネススクールMBA。専門はストラテジー&マーケティング、企業財務、リーダーシップ論、組織論等の経営学領域全般。企業・社会・政治等の戦略分析を行う戦略分析コンサルタントでもある。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役(海外の資源エネルギー・ファイナンス等担当)、シティバンク資産証券部トランザクター(バイスプレジデント)、バンクオブアメリカ証券会社ストラクチャードファイナンス部長(プリンシパル)、ABNアムロ証券会社オリジネーション本部長(マネージングディレクター)等を歴任。『GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略』『アマゾン銀行が誕生する日 2025年の次世代金融シナリオ』『アマゾンが描く2022年の世界』『2022年の次世代自動車産業』『ミッションの経営学』など著書多数。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米総合PMI、12月は半年ぶりの低水準 新規受注が

ワールド

バンス副大統領、激戦州で政策アピール 中間選挙控え

ワールド

欧州評議会、ウクライナ損害賠償へ新組織 創設案に3

ビジネス

米雇用、11月予想上回る+6.4万人 失業率は4年
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 8
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「日本中が人手不足」のウソ...産業界が人口減少を乗…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story