コラム

新規上場スナップチャット、自称「カメラ会社」で何を狙うのか

2017年03月06日(月)15時10分

スピーゲル氏は、この製品が真のイノベーションを実現し消費者に定着するまでスペクタクルズの新製品を出し続けると語っている。ウエラブルという最注目分野の観点から見ても、グーグルを凌駕するような位置にいるのがスナップ社なのだ。

その他、同社が現在準備を進めているサービスには、スナップ・ショーというものがある。これはハリウッド女優やスーパーモデルと提携して、同社のカメラやアプリを使って、これらのセレブがスマホ上でリアリティー・ショーを展開するというものだ。

リアリティー・ショーとは、トランプ大統領が出演していたアプレンティスで日本でも有名になった概念であるが、スナップ社では、そもそも普通のユーザーが同社のサービスを使って自らのリアリティー・ショーを普段から楽しんでほしいと切望してきた。それをまずはセレブから始めていこうとしているのだ。

さらには、スナップ社では、カメラやアプリのサービスをバックパックやその他身の回りの持ち物につけていく計画も明らかにしている。

「カメラ会社」としてのイノベーションとは?

旧来からの「カメラ会社」において、イノベーションとは製品における高画像化や高付加価値化を意味してきたのかも知れない。しかし、スナップ社における「カメラ会社」としてのイノベーションとは、あくまでも若者や子供が本能的に何をしたいと思っているかを出来るだけ忠実に製品化しようとする試みなのだ。

マーケティングにおいては、消費者が企業に求める関係性やその消費者心理のことをブランド・リレーションシップと呼んでいる。強いブランドがさらに強くなるポイントとして、ブランド論のなかでも注目されているフロンティアの1つだ。

ユーザーとの間でフラットな関係性を構築するのに成功し、「このブランドとは、ずっといっしょにいたい、いっしょに価値を創っていきたい」(「共生や共創」)、「このブランドと自分は対等な関係であり、だから自分もいっしょに広げていきたいと思う」(「顧客エンパワーメント」というブランド・リレーションシップを創り上げてきたスナップ社のこれからにさらに期待したい。

プロフィール

田中道昭

立教大学ビジネススクール(大学院ビジネスデザイン研究科)教授
シカゴ大学ビジネススクールMBA。専門はストラテジー&マーケティング、企業財務、リーダーシップ論、組織論等の経営学領域全般。企業・社会・政治等の戦略分析を行う戦略分析コンサルタントでもある。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役(海外の資源エネルギー・ファイナンス等担当)、シティバンク資産証券部トランザクター(バイスプレジデント)、バンクオブアメリカ証券会社ストラクチャードファイナンス部長(プリンシパル)、ABNアムロ証券会社オリジネーション本部長(マネージングディレクター)等を歴任。『GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略』『アマゾン銀行が誕生する日 2025年の次世代金融シナリオ』『アマゾンが描く2022年の世界』『2022年の次世代自動車産業』『ミッションの経営学』など著書多数。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

新型ミサイルのウクライナ攻撃、西側への警告とロシア

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 9
    巨大隕石の衝突が「生命を進化」させた? 地球史初期…
  • 10
    バカげた閣僚人事にも「トランプの賢さ」が見える...…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story