コラム

名馬だらけのテーマパークを造った新疆ウイグル自治区の逸材企業家

2017年04月29日(土)16時28分

新疆古生態園の名馬「汗血馬」ことアハルテケ(写真:府川葵)

<アハルテケやモウコノウマという貴重な品種の馬が100頭以上。他にも植物の化石である珪化木などが展示された"知られざる観光地"が、新疆ウイグル自治区のウルムチにある。造り上げたのは、悲しい目をした豪快な企業家だった>

こんにちは、新宿案内人の李小牧です。私が率いる日本メディア関係者の「新長安・新シルクロード・新夢路視察団」は3月22日から29日にかけて、中国西部を訪問した。前回のコラム(中国の旅行会社が「新シルクロード」に日本メディアを招待した理由)では西安を中心にレポートしたが、今回は新疆ウイグル自治区で出会った逸材企業家について紹介したい。

皆さんは「汗血馬」をご存知だろうか。『三国志』の関羽の愛馬、赤兎馬のモデルになったと言われる中央アジアの名馬だ。2000年以上も昔、前漢の時代には、この馬を手に入れるために武帝が西域に遠征軍を送ったほどだという。

伝説の汗血馬の子孫と考えられているのがアハルテケという品種だ。きわめて貴重な馬なのだが、新疆ウイグル自治区ウルムチ市にある「新疆古生態園」では100頭を超えるアハルテケが飼育されている。そして汗血馬以上に貴重な絶滅危惧種であるモウコノウマも数十頭いるほか、日本から輸入されたサラブレッドまで飼育されている。

馬だけではない。植物の化石である珪化木(けいかぼく)が350本、大小さまざまな隕石が計3000トン、他にも中国では宝飾品として愛されているゴビ石の原石など、きわめて貴重な財宝が膨大に展示されている。

lee170429-1.jpg

立ち並ぶ珪化木。これはほんの一部だ(写真:府川葵)

lee170429-2.jpg

これも珪化木。幻想的でさえある(写真:府川葵)

lee170429-3.jpg

こちらは隕石。プライベートコレクションとは思えないほどの数が陳列されている(写真:土居悦子)

しかも、この新疆古生態園だが、ウルムチ市の中心にある人民広場から車で30分程度の市街地にある。衛星写真(下)を見ても、巨大な森、馬の飼育用地とレースコースが住宅地のど真ん中にあることが一目瞭然だ。

今やウルムチ市もビルが立ち並ぶ大都会、中国西部最大の都市である。シティセンターからさほど離れていない場所にこれだけの用地を確保するとなると、収蔵された宝物と同等かそれ以上の土地代がかかるのではないだろうか。

この新疆古生態園、いったい何なのだろうか? 一般的な動物園やテーマパークなどと異なることは明らかだ。しかも公営ではなく私営であり、そのオーナーこそが、私が出会った逸材企業家の陳志峰氏(54歳)である。新疆ウイグル自治区アルタイ地区出身の漢民族だ。

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 8
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story