コラム

中国人を狙った「AV風俗詐欺」横行、五輪までに合法・管理化を!

2017年03月07日(火)11時15分

BestForLater91-iStock.

<中国のネットで今、「日本AV風俗をオーダーメイド」というツアー旅行のパンフレットが出回っている。「東京に行けばAV女優に会えるかも」というスケベ心につけこんだ詐欺を野放しにしていいのか>

こんにちは、新宿案内人の李小牧です。中国のネットで今、次のようなパンフレットが出回っていることをご存じだろうか。

パンフレットのタイトルは「日本AV風俗 深度定制」(日本AV風俗をオーダーメイド)。7泊8日の日本ツアー旅行の案内となっている。富士山や箱根、浅草、お台場といった定番観光地も回るが、メインとなるのは日本の風俗体験だ。

到着初日の夜の女体盛り宴会から始まり、ストリップ、デリヘル、ソープランド、AV撮影現場見学、温泉旅館でのコンパニオンとの一夜、韓国式歓楽街訪問、おっぱいパブなどが盛り込まれている。希望があればAVへの出演(記念としてDVDがもらえるという触れ込みだ)、コスプレ、JKリフレなどのオプションもつけられるという。

わずか8日間の日程にこれほど多くの内容を詰め込んでいるのだから、最後にはへとへとになってしまうのではないだろうか。

lee170306-sub.jpg

「日本AV風俗 深度定制」パンフレットより

このいかがわしいツアーが実在するかどうかは不明だ。パンフレットには浅草にある旅行会社が企画・運営元と記されている。知人のノンフィクション作家・安田峰俊氏が調べたところ、該当の住所には別の会社が入居しており、ドアホンを鳴らしても誰も出てこなかった。また記載の番号に電話しても自動応答のテープが流れるばかりだったという。

ただのイタズラなのか、それともすでに会社が移転したのかはわからないが、それでも相当数の中国人がこのパンフレットを目にし、「東京にはAV女優風俗がある」と信じ込んだことは事実である。

というのも「日本のAV女優に会える」という触れ込みは、多くの中国人男性にとって魅力的なフレーズなのだ。米国、日本、ドイツという経済大国は、いずれもポルノコンテンツ大国――経済大国でポルノコンテンツ産業が発展していないのは中国ぐらいではないだろうか――であるが、その中でも日本のAVは中国市場で圧倒的な地位を築いている。

同じアジア系という文化の近さや日本人の細やかさが中国人の心をとらえたのだろう。中国での蒼井そら人気は有名だが、それ以外でも有名AV女優は日本の芸能人をはるかに上回る知名度を誇っているし、「雅蠛蝶(やめて)」というAV頻出用語は中国の若者ならば必ず知っている言葉となっている。

昔は抗日戦争映画で使われる「ミシミシ(メシ、メシ)」「バカヤロー」がもっともよく知られている日本語だったが、今やAVのほうが影響力が強いのだ。それほどまでに、違法ダウンロードソフトを使ってハードディスクいっぱいに日本の海賊版AVを収集していた中国人男性は多い。

【参考記事】美しいビーチに半裸の美女、「中国のハワイ」にまだ足りないもの

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口の中」を公開した女性、命を救ったものとは?
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 5
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 8
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story