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選挙に落ちたら、貿易会社の社長になれた話
"元"中国人の出馬は大反響を呼んだ。取り上げられた記事がヤフーのトップニュースになり、批判と罵声のコメントが山のようについた。精神衛生のためには見ない方がいいとわかっていたが、どうしても見てしまう。街頭演説中に「中国人は信用しない」「国に帰れ!」と怒鳴られたこともあった。
【参考記事】文革に翻弄された私の少年時代
でも、こうしたことも含めてすべてが良い経験となったし、楽しかった。自分を成長させてくれた、良い機会だったと思う。
中国人は民主主義に興味津々だった
区議選では1018票の投票をいただいたが、当選には422票が足りなかった。だが私、李小牧は1回の失敗であきらめる男ではない。2019年の次回選挙までにこの差を埋めていきたい。
――と意気込んだのはいいものの、問題はお金だ。質素な選挙戦だったとはいえ、ポスターや名刺の印刷などで数百万円がかかった。今回は妻のお許しが出たとはいえ、次回はさすがに許してもらえないだろう。
というわけで私は、日中をつなぐビジネスの道を選ぶこととなった。思いも寄らなかったが、出馬により知名度だけでなく信用度まで上がったことで、中国の企業家から「日本がらみのビジネスがしたいのですが」と声をかけられることが増えたのだ。
「"元"中国人、日本で選挙に挑む」のニュースは、中国でも大々的に報道されていた。世界を見れば華人政治家は珍しくないが、二世や三世ばかりで、私のように国籍を取得した一世で政治家を志す人は少ない。しかも、独裁国家に住む中国人は民主主義に興味津々だ。台湾総統選のニュースを貪るように見入っていたのと同じく、この李小牧の一挙手一投足にも注目が集まっていた。
かくして「政治家」李小牧は中国の有名人になり、テレビ番組のゲストとして呼ばれる機会も増えた。今では中国に行くたびに空港の入国審査で係員に盗み撮りされる。
「中国でビジネスをすれば騙される」と不安に思う日本人は多い。だが実は中国人も日本でのビジネスに不安を感じている。「政治家」であり"元"中国人の私は、日中のビジネス界をつなぐ最良の選択肢というわけだ。そして落選から1年が過ぎた今、私は貿易企業、「保健」用品メーカー、そしてウェブメディアの3つの会社で社長という肩書きを持っている。
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