コラム

横断歩道上でいつまでも歩行者が犠牲になる日本 運送業界に変革の狼煙

2022年03月30日(水)20時45分

東海三県中心にLPガスの販売事業を展開するマルエイグループの専門物流会社マルエイ運輸は、 社員との不協和を感じ、「社員FIRST」を掲げて、2021年よりRespect the Law 38プロジェクトに参加した。交差点で歩行者に道を譲る思いやり動画を出してほしいと呼びかけたところ、約1200本がすぐに集まった。

澤田正二代表取締役社長は「AからBに運んで当たり前と思われがちな事業で、なかなかありがとうと言ってもらえない。歩行者に道を譲ると、多くの人は会釈をしてくれたり、笑顔をくれる。1日その人の顔が浮かんだりして、良い方に連鎖していると感じている」と話す。

動画を集めるようになって、ドライバーの気持ちにも変化が現れ、事故が激減したという。

中部電力・東京電力の電柱輸送を中心とした重量物や長尺物の運搬を行う柘運送も2021年よりRespect he Law38プロジェクトに賛同。社外向けに自社の安全活動を伝えようとユーチューブで活動を紹介し始めたところ、社内の事故が8割以上減るという結果につながった。

「交通違反を犯さないため」にルールを守ることの限界

JAF「思いやりティ ドライブ」の日本のドライバーについて尋ねるインタビューに、ゲーテ・インスティトゥート東京所長でドイツ出身のペーター・アンダース氏が応じている。日本人の運転手を「規律を守るドライバー」と評価する一方で、疑問も示す。

「少なくとも都市部では、日本のドライバーはよく止まっているように感じます。ただしそれは、『交通違反を犯さないため』のように思うのです」

「ドイツの自動車学校では、自分がどんなミスをするかより、まわりの人が何をするかの状況判断を学び、訓練します」

交通安全とは、そうしたコミュニケーションの技術だともいえるとアンダース氏は述べる。

交通部運転免許管理担当参事官や春日井警察署長を歴任した愛知県安全運転管理協議会の小林眞・専務理事は「歩行者を守るような気持ちで運転してほしい」と話す。

減点や罰金を避けるためだけでなく、何のための法律・ルールなのかを今一度考え直す必要がある。「歩行者優先」を意識する動きは事業者を中心に広がりつつある。この空気が一般ドライバーにも伝播していくことを期待したい。

プロフィール

楠田悦子

モビリティジャーナリスト。自動車新聞社モビリティビジネス専門誌『LIGARE』初代編集長を経て、2013年に独立。国土交通省の「自転車の活用推進に向けた有識者会議」、「交通政策審議会交通体系分科会第15回地域公共交通部会」、「MaaS関連データ検討会」、SIP第2期自動運転(システムとサービスの拡張)ピアレビュー委員会などの委員を歴任。心豊かな暮らしと社会のための、移動手段・サービスの高度化・多様化とその環境について考える活動を行っている。共著『最新 図解で早わかり MaaSがまるごとわかる本』(ソーテック社)、編著『「移動貧困社会」からの脱却 −免許返納問題で生まれる新たなモビリティ・マーケット』(時事通信社)、単著に『60分でわかる! MaaS モビリティ革命』(技術評論社)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪首相、米相互関税に「友好国の行為でない」 報復措

ビジネス

国外初の中国グリーン債発行に強い需要、60億元に応

ビジネス

トランプ関税で影響の車両に「輸入手数料」、独VWが

ワールド

米関税「極めて残念」と石破首相、トランプ大統領に働
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 8
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 9
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story