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横断歩道上でいつまでも歩行者が犠牲になる日本 運送業界に変革の狼煙
東海三県中心にLPガスの販売事業を展開するマルエイグループの専門物流会社マルエイ運輸は、 社員との不協和を感じ、「社員FIRST」を掲げて、2021年よりRespect the Law 38プロジェクトに参加した。交差点で歩行者に道を譲る思いやり動画を出してほしいと呼びかけたところ、約1200本がすぐに集まった。
澤田正二代表取締役社長は「AからBに運んで当たり前と思われがちな事業で、なかなかありがとうと言ってもらえない。歩行者に道を譲ると、多くの人は会釈をしてくれたり、笑顔をくれる。1日その人の顔が浮かんだりして、良い方に連鎖していると感じている」と話す。
動画を集めるようになって、ドライバーの気持ちにも変化が現れ、事故が激減したという。
中部電力・東京電力の電柱輸送を中心とした重量物や長尺物の運搬を行う柘運送も2021年よりRespect he Law38プロジェクトに賛同。社外向けに自社の安全活動を伝えようとユーチューブで活動を紹介し始めたところ、社内の事故が8割以上減るという結果につながった。
「交通違反を犯さないため」にルールを守ることの限界
JAF「思いやりティ ドライブ」の日本のドライバーについて尋ねるインタビューに、ゲーテ・インスティトゥート東京所長でドイツ出身のペーター・アンダース氏が応じている。日本人の運転手を「規律を守るドライバー」と評価する一方で、疑問も示す。
「少なくとも都市部では、日本のドライバーはよく止まっているように感じます。ただしそれは、『交通違反を犯さないため』のように思うのです」
「ドイツの自動車学校では、自分がどんなミスをするかより、まわりの人が何をするかの状況判断を学び、訓練します」
交通安全とは、そうしたコミュニケーションの技術だともいえるとアンダース氏は述べる。
交通部運転免許管理担当参事官や春日井警察署長を歴任した愛知県安全運転管理協議会の小林眞・専務理事は「歩行者を守るような気持ちで運転してほしい」と話す。
減点や罰金を避けるためだけでなく、何のための法律・ルールなのかを今一度考え直す必要がある。「歩行者優先」を意識する動きは事業者を中心に広がりつつある。この空気が一般ドライバーにも伝播していくことを期待したい。
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