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鉄道車両内への防犯カメラ設置を進める日本が、イギリスの「監視カメラ」に学べること
こうした視点から、犯行のコストやリスクを高めたり、犯行のリターンを少なくしたりする研究が進められてきた。その結果が1980年の内務省報告書『デザインによる防犯』だ。それによると犯罪機会論の対策は、①犯行を難しくすること、②捕まりやすくすること、③犯行の見返りを少なくすること、④挑発しないこと、⑤言い訳しにくくすること、という5つのグループに分類されるという。このうち、防犯カメラは第2のグループ、つまり、捕まりやすくすることの一手法に当てはまる。
ただし、イギリスでは、「防犯カメラ」ではなく、「監視カメラ」と呼ばれるのが一般的だ。ちなみに日本では防犯カメラと呼ばれることが多いが、リアルタイム・モニタリングをせず、録画のみしているので、その実体は「捜査カメラ」である。どうも日本では、「防犯」と名付ければ、それが自然に実現すると思われているようだ。言霊信仰と言ってもいい。
欧米諸国と日本の違い
現実志向のイギリスでは、車内カメラについても監視カメラと呼ばれている。その歴史は古く、2001年のジュビリー線を皮切りに、ロンドンの公営地下鉄において車内監視カメラの設置が始まった(写真1)。また、リアルタイム・モニタリングをするため、事務所にモニター室が設けられた(写真2)。
この動きは、犯罪機会論を実践してきた欧米諸国に広まり、車内監視カメラの設置が進んだ。例えば、ウィーン(オーストリア)の地下鉄(写真3)や、メルボルン(オーストラリア)の路面電車(写真4)にも、車内監視カメラが導入された。
日本でも、2009年に初めて防犯カメラがJR埼京線の車内に設置された。もっとも、当時は大宮方向の先頭車両(1号車)だけだったが、前述したように、義務化という形で防犯カメラの設置が加速されることになった。
もっとも、鉄道会社は相変わらず申し訳なさそうに防犯カメラを設置している。できるだけ目立たないよう配慮しているようだが、この点も欧米諸国とは大違いだ。犯罪の動機を持つ者に防犯カメラの存在を気づかせなければ抑止力にはならない。気づかなくても捜査カメラにはなるが、防犯カメラにはならない。そのため、イギリスでは巨大なポスターが掲示され、車内監視カメラの存在をアピールしている(写真5と写真6)。
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