ロシアの新たな武力機関「国家親衛軍」はプーチンの親衛隊?
だが、プーチン氏が首相職から大統領職へと復帰する直前の2012年春、国家親衛軍の設立話が再浮上する。当時、一部のメディアで報じられた構想によると、これは国内軍だけでなく、軍の空挺部隊や国家非常事態省まで統合して30-40万人の組織を設立するというものであった。ロシア政府はただちにこの構想を否定したが、なんらかの観測気球であった可能性も否定できない。当時、ロシア政府内部では前述の反政権デモが内政の安定を揺るがすものとして深刻に受け止められていた上、一度は鎮圧したはずの北カフカスのイスラム過激主義勢力が活動を再活発化させていた時期であり、こうした強力な準軍事組織が必要とされたとしても不思議はない。
「カラー革命」の脅威?
このような経緯を踏まえて、国家親衛軍のような強力な国内向け準軍事組織が設立されたことの意義を考えてみよう。
第一に指摘できるのは、国内軍にOMONが統合されたことである。OMONは大規模なイベントの警備や反体制デモなどの鎮圧を任務とする警察組織であり、国内軍内にも同様の任務を担当する特別自動車化部隊(SMVCh)という似たような部隊が存在するので、両者の統合は、重複の排除による合理化策という側面は存在するだろう。
第二に、今年9月には下院選挙が予定されており、しかも経済危機下で国民の不満が鬱積していることを考えれば、2011年末のような事態の再来をプーチン政権が恐れているという側面もまた十分に考えられるところである。国家親衛軍設立が明らかにされた2日後、プーチン大統領の政敵として知られる富豪のホドルコフスキー氏らが設立した「開かれたロシア」は、ウェブサイト上で「モスクワ近郊における国家親衛軍の秘密演習」と題された映像を公開した。これはモスクワ郊外のミャチュコヴォ飛行場で実施されたもので、内務省が多数の要員や装甲車を動員して暴徒を鎮圧する訓練の様子が収められている。こうした訓練はこれまでも実施されており(たとえば2015年には「ザスロン2015」と呼ばれる大規模鎮圧演習が実施された)、国家親衛軍の想定している事態がどのようなものかを垣間見せたものと言える。
第三に、国内治安に対するより深刻な懸念も見逃すことはできない。ロシアは近年、アフガニスタン情勢やシリア情勢に連動してロシア国内のイスラム過激主義勢力が活動を活発化させる可能性への懸念を繰り返し表明してきた。
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