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横浜市長選で「秒殺」された菅首相が描く総裁選・総選挙シナリオ
相次ぐ難題に菅首相の胸中は? Thomas Peter-REUTERS
<菅首相のお膝元・横浜で争われた市長選挙は野党系候補の圧勝という結果に終わった。個別の地方選挙は国政に影響しないと自民党幹部は総選挙へのダメージを否定するが、コロナ対策批判という荒波を乗り越えるため菅首相はどんな「次のシナリオ」を描いているのか>
8月22日に行われた横浜市長選挙で、野党共闘候補の山中竹春氏が自民党の小此木八郎・前防災相を破り、約18万票の大差をつけて圧勝した。自民党にとっては4月の衆院・参院補選や7月の都議選に続く手痛い敗北で、「横浜の不覚」が菅首相の解散総選挙戦略に与える影響は不可避であろう。
今回の市長選挙は、現職の林文子市長の他に田中康夫・元長野県知事や松沢成文・前神奈川県知事など、候補者8人が乱立する選挙となり、法定得票数(有効投票総数の25%)に誰も届かず「再選挙」になる可能性も指摘されていた。しかし、IR(カジノを含む統合型リゾート)誘致問題だけでなく、デルタ株の感染爆発が止まらない状況の中で「菅政権のコロナ対策の是非」も争点化。広く関心を集めた結果、投票率は前回より約12ポイント増の49.05%に達した。
選挙戦終盤の情勢調査からは、山中候補が圧勝する可能性が取り沙汰されており、投票が締め切られた午後8時直後に「当確」が出たこと自体に驚きはない。しかし、首相のお膝元で、現役閣僚がその座を投げうって挑戦した市長選挙で敗れるという一連の結果に衝撃が走っている。
各社の出口調査結果などを見ると、50万6392票(得票率33.59%)を獲得した山中竹春氏は、立憲民主、共産、社民の各支持層を手堅く固めるとともに、無党派層から4割前後の支持を得ている。これに対して小此木氏は無党派層の支持は1割前後にとどまり、公明党の支持層はほぼ固めたものの、自民党支持層の投票先は小此木氏だけでなく、林氏や山中氏などに分散した。
IR誘致を巡って保守系候補が小此木氏と林氏に分裂した影響は大きく、また無党派層の「政権批判票」が菅首相と近い関係にある小此木候補を直撃した形だ。立憲民主党の江田憲司・代表代行が擁立を主導した新人・山中竹春氏は、横浜市立大学医学部教授として「コロナの専門家」であることをアピールし、感染爆発で溜まる政権批判票の受け皿となった。今回の選挙特有の問題として、IR誘致を巡る住民投票条例案の否決と林市長への批判の高まり、林市長に代替する候補者の選定難航、「ハマのドン」と呼ばれる藤木幸夫・横浜港ハーバーリゾート協会会長と菅首相との関係、山中候補の適性に関する「落選運動」といった様々な個別の要素が背景にあろう。また、田中康夫氏や松沢成文氏のような県知事経験のある著名人が出馬したことによる票の分散が与党系、野党系ともに影響を与えており、今回の横浜での選挙結果が必ずしも、次の衆議院小選挙区選挙にそのまま妥当する訳ではない。
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