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「厳しい決断」と言いつつ、自分たちには甘い財務相...これで英国は、投資と成長を取り戻せるのか?
リーブス財務相(9月23日) Phil Noble-Reuters
<労働党のリーブス財務相は保守党時代の財政ルールの変更を匂わせ、「英国を再び成長軌道に乗せる」と宣言したが......>
[リバプール発]英イングランド北西部リバプールで開かれている労働党大会で9月23日、レイチェル・リーブス財務相は「保守党の負の遺産に対処する。それは厳しい決断を意味するが、英国への私たちの野心を曇らせるつもりはない」と投資のため財政ルールの変更を匂わせた。
14年ぶりの政権奪取後初の秋予算が発表されるのは10月30日。リーブス氏は「英国を再び成長軌道に乗せ、国民保健サービス(NHS)を立て直し、英国全土のあらゆる地域で成長を促進する」と表明したものの、党大会の演説でも秋予算の詳細は明らかにしなかった。
「保守党は少数の人々、国内の一部地域、一部産業の貢献によって強い経済が築けるというトリクルダウン・トリクルアウト理論に固執した。その考えは投資を阻害し、国内の地域格差を広げ、成長と生活水準を窒息させた」と口先だけの前保守党政権のリバタリアン政策を批判した。
「国内総生産(GDP)の100%に相当する政府債務残高。議会にも隠された220億ポンド(約4兆2200億円)の財政の穴。その中には英国に不法入国した難民申請者をルワンダに送る難民政策の失敗を含む60億ポンド(約1兆1500億円)以上の超過支出も含まれる」(リーブス氏)
「すべての国民が私の決定に賛成するわけではない」
財政の信認を支える英国の予算責任局(OBR)によると、今後50年間で歳出はGDPの45~60%超に増加する一方で歳入は40%前後にとどまる。政府債務残高は2030年代後半から急速に増加し、ベースライン予測でGDPの274%に達する見通しだ。英国にも日本化の波が押し寄せる。
リーブス氏は所得税、付加価値税(VAT)、国民保険料を通して現役世代の増税を行わないとの公約を繰り返した。その代わり冬季燃料費給付金を事実上廃止。保守党支持の高齢者・富裕層の不労所得を標的にするキャピタル・ゲイン課税・年金増税などが取り沙汰される。
リーブス氏は「すべての国民が私の決定に賛成するわけではないが、政治的な都合や私的な利益のために決定を回避することはない」と鉄の女マーガレット・サッチャー(保守党)を彷彿させる不退転の決意を見せた。しかし冬季燃料費給付金を巡る怨念は労働党内にも渦巻く。
保守党政権には無駄遣いが多すぎた。リーブス氏は政府のコンサルタント費用を半減させる。閣僚の航空機利用を減らすため4000万ポンド(約76億8000万円)のVIPヘリコプター契約を破棄。コロナ危機でのマスクや感染防護具の浪費と不正を徹底的に調査すると宣言した。