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エネルギー危機で倒産の連鎖...英経済に失政でとどめ刺したトラス政権、早くも崩壊へ?
民間企業の定期昇給は7月時点で6%と上昇を続けているものの、8月の消費者物価指数(CPI)は9.9%とそれを上回る。インフレは10月に11%弱でピークを迎えるとみられているが、賃金の上昇はとてもインフレには追いつかない。さらに英国の労働参加はコロナ前より50万人も減少している。
米金融情報会社S&Pグローバルによると、英国経済の約4分の3を占めるサービス部門はコロナ危機によるロックダウン(都市封鎖)以来18カ月ぶりに鈍化し、景気後退の瀬戸際にあるとの懸念が強まっている。インフレ高進と生活費の危機を背景に一般家庭が一気に支出を控えたことが原因だ。
キングス・カレッジ・ロンドンのアナンド・メノン教授(欧州政治と外交)は研究プロジェクト「変わっていく欧州の中の英国」への寄稿で「トラス氏を党首に選んだことで保守党大会はいろいろな意味で奇妙な大会となった。ミニ予算は就任後1カ月足らずでトラス氏の党首としての地位を危うくした」と書いている。
トラス氏の予算案が保守党下院議員の造反により英下院で承認されなければ(1)クワーテング財務相の更迭(2)トラス氏が首相を辞任して党首選実施(3)解散・総選挙の順で政局が動く可能性がある。血の匂いを求めてトラス氏の周辺を野心的な保守党下院議員がサメのように泳ぎ回っている。