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エネルギー危機で倒産の連鎖...英経済に失政でとどめ刺したトラス政権、早くも崩壊へ?
英紙ガーディアンは「問題は今後数カ月の間に住宅ローンの金利が上がるのか下がるのか分からないということだ」と指摘する。住宅ローンの上昇に伴い、住宅価格に著しい下降圧力がかかる。ロイズ・バンキング・グループ傘下のハリファクスによると、住宅価格の年間上昇率はすでに11.4%から9.9%に鈍化している。
住宅取得時にかかる印紙税の引き下げ、住宅供給の不足、好調な労働市場が住宅価格を支えているものの、「生活費の危機」の中で金利が急上昇し続けるという見通しが住宅価格により大きな下降圧力をかけると予想される。「英国の住宅価格は来年に少なくとも10%下落する」(住宅ローンの仲介業者)という。
エネルギー価格の高騰で相次ぐ倒産、13年ぶりの高水準
英国家統計局(ONS)によると、エネルギーコストの高騰とサプライチェーンの停滞で今年第2四半期、イングランドとウェールズで建設業、卸売・小売業、宿泊・飲食サービス業を中心に5629社が倒産した。世界金融危機で08年第4四半期、倒産件数は6943件とどん底を記録したが、今回はその影響を引きずる09年第3四半期以来の高水準となった。
倒産件数の内訳は建設業が1039件、卸売・小売業は802件、宿泊・飲食サービス業は611件だ。企業が倒産する割合はコロナ前の4年間に記録された四半期の平均値(3850件)より46%も高くなっている。英国企業の10社に1社以上が「中程度から重度」の倒産リスクを打ち明けており、これからさらに倒産が相次ぐとの懸念を抱かせた。
ONSによると、22%の企業がエネルギー価格を主な懸念事項に挙げ、今年2月下旬の15%から上昇していた。従業員10~49人の企業では30%と増えている。倒産件数の増加は(1)エネルギー価格の高止まり(2)債務返済が困難(3)原材料費の上昇(4)サプライチェーンの混乱など、いくつかの要因が関わっているとみられている。
ガス価格指数は今年第1四半期に昨年同期比の70%増となった。エネルギー価格の上昇は英国企業にとって重大に懸念材料になりつつある。エネルギーコストは企業が値上げを検討する主な要因になっており、企業の約46%がエネルギー価格のために10月に値上げを検討すると回答した。
生活費の危機は深刻化
英中央銀行・イングランド銀行のデイヴ・ラムスデン副総裁は7日の講演で「今年第4四半期のガス先物価格は昨年8月の予想に比べ7倍になっていた。英国はエネルギーの純輸入国であるため、国民所得は減少し、英国経済は貧しくなる。1年前よりもエネルギー価格の上昇によって生活が悪化し、生活費の危機が深刻化する」と指摘した。